2018年4月5日木曜日

ロバの耳通信「そらをみてますないてます」

「そらをみてますないてます」(14年 椎名誠 文春文庫)

読んでいて、半分を超えた頃から残ったページの厚みがすこしづつ薄くなることを残念に思い、大事に、大事に、惜しみながら読んだ。今回は図書館から借りたが、たぶんというか、またいつか、借りるか、買ってしまうだろう。椎名の作品は大好きで、ほとんど読んでいたつもりだったのだが。
この作品は自伝ともいえる青春物語、ロシアの極寒地帯のタイガへの訪問記、タクラマカン砂漠の旅日記の3つのストーリーからなる。自伝のほうは衒いも気取りもなく、惜しむように「若いころ」を語り、2つの旅行記で脇道に入る。脇道が延びたところに極寒のシベリアの地やシルクロードがある。それらの物語が、段落替えもない文章で入ったり戻ったりしながら広がってゆく。青春記も旅のようなものだから、3つの旅行記をテキトー、つまりは股旅のように気ままに読む楽しむことができた。さらに椎名の文章は、句読点が正確で、主語がほとんど「おれ」のままで動くことがないので、安心して読めた。
タイガもタクラマカン砂漠も若いころから夢に見るほど行きたかったところだから、まるで自分も一緒に旅行しているようで大いに楽しめた。とくにタクラマカン砂漠については、この作品のなかで何度も出てくる「さまよえる湖」(スウェン・ヘディン)が懐かしかった。
最初にヘディンを読んだのはオヤジの蔵書「シルク・ロード・・」(61年 世界教養全集23 平凡社版)。オヤジの「世界教養全集」は揃いではなかったが、冒険モノの宝庫で繰り返し読んだ。この「さまよえる湖」とほぼ同じ内容、もしかしたら同じ本だったのかもしれない。「さまよえる湖」の旺文社版(75年)を買ってずいぶん長くあちこち持ち歩いていた気がする。その本も何度かの引っ越しの際に失くして、ほんのこの間まで岩波文庫版(84年)を持っていた。またヘディンを読んでみようか。

ああ、大事なことを書くのを忘れていた。”ダッタン人ふうの別れの挨拶” ー何度か出てくるフレーズだがこれが、この「そらをみてないています」のいちばんのところ。うーん、コレ死ぬまで忘れられないだろう、ワタシも。<うん、読めばわかるってワタシが何にまいったか。>
あ、いかん。コレも書いておかねば。解説を歌人の小島ゆかりが書いているが、ワタシも同じ気持ちだよ

(追記)「そらをみてますないてます」に何度か、あるいは一度くらい出てくる冒険モノのリスト。「コンロン紀行」(スミグノフ)、「チベット人ー鳥葬の民」(川喜多二郎)、「書名不明」(ラティモア、ドローヌ、ボンヴァロ、フレミング、マゼラン)、「西域探検紀行全集」(白水社)、「航海記」(ダーウィン)、「パダゴニア」(リストには書名か著者名のどちらかが欠けているものもある。椎名が書いているから面白いに違いない。あとでアマゾンで調べよう・・)

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