「出口のない海」(06年 横山秀夫 講談社文庫)
警察モノや記者モノを書かせたら右に出る者はいない(と、思う)ベストセラー作家の横山だが、これは作り過ぎ。大学野球と人間魚雷を結び、青春モノに仕上げたつもりなのだろうが。横山は何を描きたかったのだろうか。読んでいて岡本喜八(監督)の「肉弾」(68年 邦画)と比較してしまった。「出口のない海」では不条理や哀しみをこれでもか、これでもかと文章にしているのだが、それがこちらに伝わってこない。「肉弾」は多くを語ることがなかったにも拘わらず、戦争の不条理や哀しみが伝わってきた。
映画化された「出口のない海」(06年 邦画)は主演に市川海老蔵、伊勢谷友介、塩谷瞬ほか、ワキを永島敏行、香川照之、古手川祐子ほか錚々たる役者で固め、これ以上は望めないキャスティングで見ごたえのある「青春映画」に仕上げられている。うん、海老蔵の恋人役の上野樹里は、原作の「無邪気な少女」のイメージから外れていたからミスキャストだったな。「肉弾」で大谷直子が演じていた少女を連想したかったのだが、うん、ワタシの勝手な思い込みか。
佐々部清(監督)、山田洋二ほか(脚本)がよかった。製作も配役も、こういう映画ってこれからはあまり巡り合えそうもないかな。
そうか、横山の意図は「青春」だったのか。「反戦」ではなかったのか・・。
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