2021年3月18日木曜日

ロバの耳通信「光線」「震える牛」

「光線」(12年 村田喜代子 文藝春秋社)

図書館から借りた本を一時的に入れておく書棚が寝室にあるのだが、たまたまこの本を手に取ったときに、なんだか寒気がした。カミさんが借りた本で、書名も著者も初めて。春の夜、まだひんやりした空気のなかで、偏見も予備知識もなしに掴んだ筈なのに8編の短編の巻頭が表題となった「光線」。ページの半分くらいから始まった、主人公の妻が子宮がんになって、検査を進めてソレが具体的な怖さとなって、ジワジワと押し寄せ、行間から瘴気が湧き出すように怖さがつのってゆく、まだ数ページも進めないうちに、だ。
怪談物語のように闇が自分の周りに迫ってくるから、恐る恐るページをめくってゆくと30ページで終わって、なんだかホッとしてしまった。

うん、ガンって怖いな、自分がガンにかかるのは長年の不信心のツケとあきらめてしまうのだろうが、家族がこういう恐ろしいガンにかかったら耐えられないだろうと思う。残りのオマケの7短編を読むと、この本の主題はむしろ原発事故にあるようだ。

「震える牛」(12年 相場英雄 小学館)

警察組織の抗争を描いた警察小説の形を取りながらも主題はBSE問題や食品偽装。「雑巾(ゾウキン)」と呼ばれるハンバーグ原料の暴露など、ゾッとするところが多かった。当時はかなり話題になってベストセラーになったり、テレビドラマ(WOWOW)にもなったようだが、特に食品偽装については沙汰やみになっている気がする。食品偽装なんてアタリマエになっているような気がする。心底怖い。
カミさんとこの本を読んでから、ファミレスやスーパーの出来合いのハンバーグを食べなくなった。

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