2018年7月25日水曜日

ロバの耳通信「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」(15年 米)

原題はDemolition(破壊)だが、邦題のほうがずっといい。ジェイク・ギレンホールが妻を亡くした会社員、義父を - クリス・クーパー、シングルマザーナオミ・ワッツの息子役のジュダ・ルイスなどなど芸達者がそろっていて、通勤電車で隣り合うガードマンのおじさんたちまで実にハマっていた。有名、無名ともこんなにいい役者が揃っている映画は珍しいんじゃないか。
ギレンホールが、車の中で妻とつまらないことで言い争うシーンから始まり、子供たちとふ頭を走るラストシーンまで、「ムクロになってしまった」気持ちが伝わってくるのだ。ココロがムクロになってしまったのは、愛する妻が死んだからではなく、妻を本当は愛してなかった、妻が死んでも悲しくなかった自分に気づいたから。

反抗児ジュダ・ルイスとの交流がいい。いま、椎名誠の「岳物語」(89年 集英社文庫)で、椎名と息子の岳とのカケアイを面白く読んでいるのだが、なんだか暖かくて似ている。

この映画、賞とは無縁のようだが、原作も、配役も、シナリオも、音楽もワタシにはとてもよかった。結局映画って、好きか嫌いか、だからね。雨の日の夕方に、また最初からゆっくり見ることにしよう。

2018年7月22日日曜日

ロバの耳通信「 Uru 」

「Uru」
この2年くらいか、ちょっと落ち込むようなことがあると Uru を聞いている。YouTube から音声だけをMP3でダウンロードしたものを、型落ちのiPhoneに入れて、夜にきくことが多いかな。たまに、YouTubeの映像付きで寝ながら聞いたりする。いつも、半分だけ出した顔で歌ってる。ほとんどはカバー曲。透き通った声で癒されるというのかな、月並みな言い方だけれど、ほかに思いつかない。じわーと浸み込んでくる。だいたいは聞きながら寝落ちしている。夜中に気が付いたら瞼がくっついていることも。

ブログを見たら、もうメジャーデビュー済みで、今年8月に初コンサートを開くと。ああ、こうなるのか、みんな。
歌のうまいコはたくさんいるさ、世の中には。キレイなコもね。でも売れるとか、スターになるのとは違う気がする。ただのヨカンだけど、Uru はあんまり売れないと思う。うまく説明できないけどね。うーん、売れないでずっと、これまでのようにカバー曲を夜中に歌っててくれないかなー、無理だろうね。

2018年7月16日月曜日

ロバの耳通信「凍える牙」

「凍える牙」(08年 乃南アサ 新潮文庫)

名前だけはよく知っていたベストセラー作家の直木賞受賞作というから、気合を入れて読み始めたのだが、実にカッタルイ、長すぎてダレるのだ。ストーリーはよくできていて、バツイチ女刑事の活躍という設定もいいのだが、相方の中年男の刑事のディテイルを語りすぎ。犯罪者のディテイルや、後のほうで本当の主人公はこっちだったかと気づく犬のディテイルが曖昧にされていたせいか、犯人捜しというミステリー小説の醍醐味が削がれた。なにより多く語られる女刑事の「ひとり言」がうざったい。ただ男社会の女性蔑視を書きたかっただけなのか、乃南は。この女刑事を主人公にした続編もあるらしいが、キャラに魅力がないからゼンゼン読みたくない。ワタシは自分と同じイジイジ、ウジウジの性格の女が嫌なのだ。女刑事なら、姫川玲子シリーズ(「ストロベリー・ナイト」(08年 誉田哲也 光文社文庫)ほか)だ、やっぱり。ヒロインは心身ともにタフでなきゃ面白くない。

タカ派の評論家・編集者の安原顯(あの有名な「ヤスケン」)があとがきを書いているが、たかだか6ページの解説が500ページ余の乃南の小説より共感を得た。

「凍える牙」は2度のテレビドラマ化や韓国で映画化(12年)されている。映画は予告編だけしかチェックしていないが、ソンガン・ホが相方のアクの強い男刑事役をやっていてなかなか面白そうな映画だった。こっちを楽しむことにしよう。

2018年7月10日火曜日

ロバの耳通信「トゥームレイダー ファースト・ミッション」

この映画のヒロインを見て、どこかで会ったような気がしたが、外人に知り合いは少ないし、女性となればなおさら。女優なら横文字の名前はともかく、顔はよく覚えているはずなのだが。

「トゥームレイダー ファースト・ミッション」(18年 米)

同名のコンピュータ・ゲームの映画化で、アンジェリーナジョリーのナイス・ボディのスーパーヒロインが大活躍した旧版「トゥームレイダー」「トゥームレイダー 2」(01年、02年 米)と違い、どちらかといえば地味な感じのスウェーデン女優アリシア・ヴィキャンデル。

行方不明となった父を探しに、父の残したノートを頼りに魔の海にあるという島の卑弥呼の墓(日本にあるらしいのだが、文字や風景はなんだかオカシイ。ムカシの西洋人にとっての日本なんてそんなものだろう)に行く。前半は、一族の墓で父のノートを発見したり、香港に父の友人を探しに行くところなど謎解き中心でやや平凡だが、島に渡ってからの後半はゲームそのもので、ドキドキするほど面白い。そういえば、ずいぶん前になるがゲームもやった記憶がある。

旧作はオリジナル、2とも見て、面白かったがタラコ唇のアンジェリーナがあまり好きではなかったし、スーパーヒロインの縦横無尽の活躍は、にぎやかすぎるというのか、ハラハラさせても(あたりまえだが)絶対死なないから飽きてしまった。ゲームのほうは、結構簡単に死んでしまい終わるまで何か月もかかったのに。

「トゥームレイダー ファースト・ミッション」を見終えてのアリシア・ヴィキャンデルが気になってwikiで出演リストをチェック。「コードネーム U.N.C.L.E.」(15年 英米)、「ジェイソン・ボーン」(16年 米)も見たはずなのだがアリシアに記憶がない・・・げ、「エクス・マキナ」(15年 英)がある。もしかしたら、とキャスティングをもう一度チェックしたら、アリシアがアンドロイド(ヒト型ロボット)のEVAじゃないか。このSF映画は、プログラマとアンドロイドのまあ、恋愛映画だった。もちろん、人間とロボットだから結局はカタストロフィーで終わるのだが。確かにこのコだ、目が同じだ。ワタシも映画のアンドロイドが好きになったのだった。そうか、そうか。

2018年7月6日金曜日

ロバの耳通信「約束された場所で―underground 2」

「約束された場所で―underground 2」 (01年 村上春樹 文春文庫)

台風の余波でか、全国が雨だらけで新幹線も止まっているらしい。朝のニュースでオウム真理教教祖の松本智津夫の死刑が執行されたと。
「約束された場所で」は村上が元信者とのインタビューを通じて深淵を覗き込もうとしたが、ノンフィクションの枠を外すこともできず彼らの言葉をトレースするにとどまった。村上がフィクション作家なのだということを再認識。「アンダーグラウンド」(99年 講談社文庫)では、もう少しのところまで踏み込んでくれていたから、今回は村上の得意な絵空事でもう少し書いてくれると期待していたのに。結局、読者のワレワレは、村上が開いてくれた深淵につながる穴の縁に立ち、恐るおそる覗き込むことしかできないのだ。
松本に続きオウムメンバーの何人かの死刑も次々に執行されているという。松本の死刑が確定したのが06年だから、すでに10年以上がたつ。ここまで執行が延ばされたことに色々なことが言われているが、今朝カミさんと話したのは「なぜ、今日」なのかだ。松本の死刑執行が、何かの隠し事の目くらましに使われているにちがいないというのが、ワレワレの意見。そしてオウムの深淵は依然、闇のままになるのだろうか。

2018年7月2日月曜日

ロバの耳通信「クワイエット・プレイス」

「クワイエット・プレイス」(18年 米)

監督のジョン・クラシンスキー、主演のエミリー・ブラントともにほとんどなじみがない。ほかの配役もチェックしても知らない俳優ばかり、盲目だが聴覚が鋭い人食い宇宙生物と戦う家族の物語ーなんて、安っぽいB級映画のスジなのだが、フタを開けたらとんでもなくいい映画だった。
人食い生物に襲われないように、ひたすら音をたてないサバイバル生活を描いているから、会話の殆んどが手話。手話のシーンは字幕が表示されるのだが、セリフは少なく、字幕がなくても困らない。音楽は「スクリーム」シリーズ(96年~ 米)、「バイオハザード」(02年 米)など思い切り怖い多くの恐怖映画で有名なイタリアの巨匠マルコ・ベルトラミでこれも最高。
聴覚障害者の娘の役の女優が、眼で感情を訴える最高の演技だったから調べてみたら聴覚障害を持つ役者だったので納得。あと2人の無名の子役が出てくるが、これがまた天才的といえる演技で、主役の母親役のエミリー・ブラントを食っていた。怖いモノ見たさで見はじめたが、切なくなるほどの家族愛で泣きそうになった。

終わり方がちょっと中途半端かなと思っていたら、続編が準備中だという。うーん、手の内を全部みてしまったからなー、本編は面白かったけど続編は見たくない気がする。