2018年7月16日月曜日

ロバの耳通信「凍える牙」

「凍える牙」(08年 乃南アサ 新潮文庫)

名前だけはよく知っていたベストセラー作家の直木賞受賞作というから、気合を入れて読み始めたのだが、実にカッタルイ、長すぎてダレるのだ。ストーリーはよくできていて、バツイチ女刑事の活躍という設定もいいのだが、相方の中年男の刑事のディテイルを語りすぎ。犯罪者のディテイルや、後のほうで本当の主人公はこっちだったかと気づく犬のディテイルが曖昧にされていたせいか、犯人捜しというミステリー小説の醍醐味が削がれた。なにより多く語られる女刑事の「ひとり言」がうざったい。ただ男社会の女性蔑視を書きたかっただけなのか、乃南は。この女刑事を主人公にした続編もあるらしいが、キャラに魅力がないからゼンゼン読みたくない。ワタシは自分と同じイジイジ、ウジウジの性格の女が嫌なのだ。女刑事なら、姫川玲子シリーズ(「ストロベリー・ナイト」(08年 誉田哲也 光文社文庫)ほか)だ、やっぱり。ヒロインは心身ともにタフでなきゃ面白くない。

タカ派の評論家・編集者の安原顯(あの有名な「ヤスケン」)があとがきを書いているが、たかだか6ページの解説が500ページ余の乃南の小説より共感を得た。

「凍える牙」は2度のテレビドラマ化や韓国で映画化(12年)されている。映画は予告編だけしかチェックしていないが、ソンガン・ホが相方のアクの強い男刑事役をやっていてなかなか面白そうな映画だった。こっちを楽しむことにしよう。

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