2018年7月6日金曜日

ロバの耳通信「約束された場所で―underground 2」

「約束された場所で―underground 2」 (01年 村上春樹 文春文庫)

台風の余波でか、全国が雨だらけで新幹線も止まっているらしい。朝のニュースでオウム真理教教祖の松本智津夫の死刑が執行されたと。
「約束された場所で」は村上が元信者とのインタビューを通じて深淵を覗き込もうとしたが、ノンフィクションの枠を外すこともできず彼らの言葉をトレースするにとどまった。村上がフィクション作家なのだということを再認識。「アンダーグラウンド」(99年 講談社文庫)では、もう少しのところまで踏み込んでくれていたから、今回は村上の得意な絵空事でもう少し書いてくれると期待していたのに。結局、読者のワレワレは、村上が開いてくれた深淵につながる穴の縁に立ち、恐るおそる覗き込むことしかできないのだ。
松本に続きオウムメンバーの何人かの死刑も次々に執行されているという。松本の死刑が確定したのが06年だから、すでに10年以上がたつ。ここまで執行が延ばされたことに色々なことが言われているが、今朝カミさんと話したのは「なぜ、今日」なのかだ。松本の死刑執行が、何かの隠し事の目くらましに使われているにちがいないというのが、ワレワレの意見。そしてオウムの深淵は依然、闇のままになるのだろうか。

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