「コンカッション」(15年 米)
日大アメフト部員による悪質なタックル事件が起きて、タックルされた選手に重篤な被害はなくまもなく復帰見込みとの報道を知ったとき、この映画のことを思い出した。マスコミはしらばっくれていた監督やコーチを非難していたし、彼らの態度にも腹が立ったが、この看過されてはいけない疾病の問題を提起したものはなかった。
つまり、「コンカッション」concussion、つまり振盪(しんとう)。代表的なものが脳震盪。繰り返し頭部をぶつけた時、そのときにはどんな検査でもわからない進行性の脳変性としてずっとあとになって慢性外傷性脳症(CTE)を発症することがあると。具体的な症状は攻撃性、錯乱、抑うつ状態などの認知症症状。ボクシングではパンチドランカーとして良く知られているが、米国ではアメリカンフットボールで裁判になった事例があるのだ。
「コンカッション」はNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の選手と慢性外傷性脳症との相関を発見し、それを指摘したせいでNFLの関係者から脅迫を受けるナイジェリア出身の医師(ウイル・スミスが好演)の実話を基に作られている。
アメリカにおけるNFLは、NBA(バスケットボール)と並び、日本でいえば野球+サッカーを足したよりずっとメジャーなスポーツでその経済効果は膨大なものとなっており、当然ながらオモテとウラに多くのヒト・モノ・カネが動いている。映画では、NFLとCTEの相関を暴こうとしたばかりに、在留資格をはく奪されそうになったり州外に飛ばされたりはするのだが、アメリカらしく多くの友人(アレック・ボールドウィン、アルバート・ブルックス)に助けられて・・とハッピーエンドに終わる。日本経済新聞16年7月10日の記事によればNFLが脳震盪で後遺症が残ることを認めたために、子供の競技人口が減って、アメリカの「国技」もピンチらしい。
ところで、うつ病で苦しむNFLの元スター選手役で出演したデビット・モース<「グリーンマイル」(99年 米)ほか>がいい演技をしていた。デビット・モースって「レ・ミゼラブル」(12年 米)でジャベール役を演じたラッセル・クロウに似てると思わないかい?
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