2018年8月11日土曜日

ロバの耳通信「さようならドビュッシー」「死者の鼓動」

「さようならドビュッシー」(11年 中山七里 宝島文庫)

このミス大賞を見直した。犯人あてのミステリー小説なんて、どうせ捻くり廻したつまらない作品だと偏見と予断で読み始めたら、恐ろしく早いストーリー展開で物語がズンズン進む。ピアノ演奏について主人公が「語る」ところだけ、時間の流れが粘っこく、濃厚になる。作曲家についても学校で習ったくらいしか知らず、クラッシックにも全く明るくないから、これでもかこれでもかと語られるピアノ曲についての「蘊蓄」が、ついてゆけないくらい。真ん中くらいで倦んで半日置いた。

ピアノ教師、祖父、介護士、母親、叔父、刑事、いじめっ子の同級生などが強烈なキャラで浮かんでは消え、また出てくる。繰り返しオバケが出てきて驚かす、オバケ屋敷のよう。犯人捜しを無意識に初めていて、夢中になっていたことに気づき、表題の「さようならドビュッシー」が最後の結びの言葉となって納得ずくでストンと腑に落ちた。うーん、こんなの初めてだ。このミスよかったぜ。

当座の本探しをこのミス大賞作にしてみようか。

「死者の鼓動」(10年 山田宗樹 幻冬舎文庫)

山田宗樹は新刊で読んだ「ギフテッド」(15年 幻冬舎)以来の作品で、その際にもエラく感動したものだが、「死者の鼓動」の巻末に載せた参考文献の数には驚いた。感動させる小説はこれだけの準備をして書くものかと。心臓移植を扱った作品なのだが、手術の様子など専門家でなければとても書けないような詳細さだ。しかも、医者が普段ワレワレに説明するよりずっとわかりやすく、説得力もある。
結末の犯人捜しというか謎解きの部分は、やっぱりと思うほどのあっけないものだったが、このところ「ハズレ」の多かった本ばかりだったから、すごい得をした気分になった。うん、山田宗樹はいいぞ。

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