「神坐す山の物語」(14年 浅田次郎 双葉社)
「神坐(かみいま)す山」は、東京の端っこにある御嶽山(みたけさん)のこと。その神社に生まれた少年が亡くなった叔父と不思議な邂逅をするという話で始まる7つの不思議物語には、ワレワレの心に住みつかれている神のような方々を、あらためて感じる。浅田は母親の実家が御嶽山の宮司だったという(wiki)から、かなり影響を受けたのだと思うが、物語全編で語られる宮司の暮らしも興味深い。浅田の小説には回想シーンが多いが、これも亡くなった人たちが思い出と一緒に現れ、消えて物悲しい。7つの掌編を読み終えて、ああ、あれはそういうことだったのかとかと思い出し、付箋だらけにした本をまた最初から読みなおすことになってしまった。うん、よかった。
浅田次郎はかなり読んだが、ワタシのベストは短編集「鉄道員(ぽっぽや)」(97年 集英社)。高倉健、広末涼子ほかで映画化(同名 99年)されて有名になったが、この短編集にはいっている「ラブ・レター」がいい。偽装結婚した元エリートの高野吾郎と中国人売春婦の高野百蘭の物語。原作を黙読していて涙がにじんでくるくらなのに、中井貴一主演の同名映画(98年)のDVDを見たときは、顔中が涙と鼻水にまみれてしまった。この映画で中井貴一の大ファンになった。
百蘭が吾郎に残した遺書のなかで「吾郎さん、吾郎さん」と愛おしく語り掛けるところでは、映画やCDブック(菅野美穂が百蘭の手紙を朗読)でも泣けた。YouTubeに朗読版があり、音声だけスマホに入れ繰り返し聞いている。
<「ラブ・レター」はワタシのブログでは2度目の登場になる。まあ、いいよね>
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