堂場の作品では、「解」(15年 集英社文庫)「穢れた手」(16年 創元文庫)が続けて「ハズレ」で、そろそろ当たるかなと期待半分で読んだが。昔の堂場の作品に比べ、主人公の描き方がかなり甘くなってる気がする。「刑事・鳴沢了シリーズ」が01年からで、シリーズ一作の「雪虫」(01年 中公新社、04年 中公文庫)の衝撃を忘れることができない。堂場は刑事モノ、スポーツモノと多作である。だから文章もウマい。が、近年の作品は初期のハードボイルド感がなくなっている。
この「邪心」でも、新人女刑事梓やら、昔の恋人愛(名前の付け方がきにくわない)との交流があったりしてそこに感情の流れを持って行くから、刑事のキャラが甘くなっている。犯罪被害者支援を主題にするのなら、このボランティアをやっていて車椅子にのった昔の恋人を中心において、刑事モノから脱却したほうがよかったのに。警視庁犯罪被害者支援課シリーズももう5作目で、まだ続く気配はあるが、どうもキレが悪い。堂場のスタートは確かに警察小説だ。そこに軸足を置くのなら、「刑事・鳴沢了シリーズ」「アナザーフェイスシリーズ」の「孤独感」や「臨場感」がもっと、もっと欲しい。堂場のスポーツモノは好みに合わないからそっちはもう読む気はない。しばらくは堂場もお休みにしようかと。
「審判」(09年 深谷忠記 徳間文庫)
初めての深谷忠記は、長かった。ページの多さよりストーリー展開に予想ができないから、緊張感のないページや、さして重要とも思われない説明が繰り返されるとイライラする。裏表紙の解説に”予想外の展開、衝撃の真相!”とあったから、期待はあるのだが、どこまですすんでもダラダラでその退屈さはなんとも耐え難い。解説での”衝撃の真相”を予告されるよりは、そこまでにストーリー展開で盛り上げてほしかった。
種明かしは本の後半になって突然始まる。そして、逆転に逆転のストーリー展開。ただそこまでが無意味に長い。
テーマは冤罪。女児殺人の罪を着せられた男の狂気の復讐劇。浮気がばれそうになって娘を殺した母親、そんなのあるかという気もするが、ニュースを見てるとそういうのもあるらしい。狂気の母親は確かに怖い、そこだけがこの作品の面白み。著者の意図は別のところだと勝手に、思う。著者は次々に登場人物にスポットを当てる。おい、そのスポットを当てるのは今じゃないだろう、それに照明をそんなにあちこち動かすんじゃないよ。え、これでおしまいか。そんなに突き放さないでくれよ。主役って誰だったの。冤罪に苦しめられ15年も刑務所にはいった男じゃなかったの。半分以上はその男のことをウダウダ語ってるよね。逆転また逆転はいいけど、ひっくり返しただけじゃダメだよ。不平と不満だけが残った長い舞台劇。
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