2018年11月3日土曜日
ロバの耳通信「アメリカン・スナイパー」
「アメリカン・スナイパー」(15年 クリス・カイルほか 早川書房)は、映画「アメリカン・スナイパー」(14年 米)で主人公カイルが帰国後に元兵士ににテキサスの射撃場で殺される「前」までを描いている。文庫本約500ページは長い。イラク戦争で200人前後を射殺した、レジェント(伝説)と呼ばれるようになった米海軍特殊部隊SEALの兵士の自伝。ワタシには戦争経験はおろか訓練の経験もないから、キツイ、タイヘンと繰り返し時には誇らしげに語られる軍事訓練の描写は饒舌でもあり辟易。どうだ、こうやって奴らを殺したんだと追想し得意げに語られる戦闘シーンも、なんだか違和感を感じる。ああ、これもイラク戦争を戦ったアメリカ人の気持ちなんだなと。
クリント・イーストウッドの手による映画の方は、迫力のドンパチの戦闘シーンが続いたあとのラストに、帰国後のカイルと妻の暮らしが描かれ、突然のカイルが殺されたという短い字幕とそれに続くカイルの葬儀シーンで、これがヒーロー称賛の映画ではなく明らかに反戦映画だと知る。
スナイパーモノの小説や映画は多いが、小説ではスティーブンハンター「極大射程」(13年 扶桑社ミステリー)ほかベトナム戦争で活躍したアメリカ海兵隊退役軍人のスナイパーのボブ・リー・スワガーを主人公としたシリーズがいい。映画化「ザ・シューター/極大射程」(07年 米)もされている。
映画ならば断然ジュード・ロウがロシアの伝説のスナイパーのヴァシリ・ザイツェフを演じた「スターリングラード」(Enemy at the Gates 01年 米独英ほか)が最高。同じくロシアの女スナイパーのリュドミラ・パヴリチェンコの伝記映画「ロシアンスナイパー」(13年 ロシア)も地味だが良い作品。
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