旅行記のようなものが好きだ。年齢を重ね、アチコチ出かけることが億劫になったり、カラダのわがままが利かなくなってくると一層どこかに出かけたくなり、それが叶わぬから代償行為としての旅行記漁りが始まる。若い頃、行ったことのない処の夢を見て思いを馳せ、旅行記を読み漁ったのとはちょっと気分が違うと思うが。
「旅の闇にとける」(15年 乃南アサ 文春文庫)
読書メーターなど書評もすごくいい。目次をチェックするとミャンマーや中国の奥地やらタスマニアやら、行ってみたくて行けなかったとこばかりじゃないか。
読み始めてどうもおかしい。いままで読んだなんとか旅行記とかとゼンゼン違う。興味を持って読み進めることができない。7章のどの書き出しも、あのドキドキするような期待感がわいてこない。作家の書きなれた文章だから、あたりまえだが普通に読めるし、蘊蓄を散りばめた体験記は目新しいことも結構ある。この本の中心となっているミャンマーの滞在記では、市井の人々との交流も丁寧に書き留められているし、明るい部分だけでなく暗いところも。これは、旅日記のカタチを借りた乃南の小説なのか。
乃南の本はいままでほとんど手に取っていない。直木賞を獲った「凍える牙」(08年 乃南アサ 新潮文庫)の時に感じたなんとも言えない「つまらなさ」を、この「旅の闇にとける」でも感じた。「つまらなさ」としか説明できないのが残念だが、このつまらなさは何に由来しているのだろうか。突き詰めれば、たぶん乃南の文章が嫌いなだけなのだろうか。ごめんなさい。
「旅の人、島の人」(14年 俵万智 河出書房新社)
3.11震災を機に、息子と2人で石垣島に住むことになった万智ちゃんのエッセイ。沖縄も石垣島も行ったことのないところだけれど、この本を読むと、行きたい、住みたいとマジに思う。旅行記とは言わないのかもしれないのだが、毎日の新しい発見が新鮮なまま語られていて、それはそれは楽しく読ませてもらった。
万智ちゃん、いつの間にか母子家庭になってる。きっと楽しいことばかりじゃなかったはずなのだろうが、この本からは手放しの解放感や温かみだけが伝わってきた。
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