信州で医師を続けている南木のエッセイ集。日々の暮らしの中で感じる季節についての感想が多い。不平不満が他人の方に向いていないのがいい。浸透圧というのだろうか、読んでいてジワーっと浸み込むのがわかる。何が浸み込むのだろうか、快いか不快かでいえばすこし快いほうだが、喜びまでには至らない。共感とか安心みたいなものか。
本を読むときはだいたいは2、3冊を並行して読むことが多い。通勤が読書時間だったころは立ったまま読める文庫本ばかりだったが、近年は居間やフトンで読むことが多くなり、ハードカバーも増えた。いま、並行して読んでいるのが「宮本輝 全短編 下」(07年 集英社)で、宮本の本も浸みる。ミステリーやハードボイルドもよく読む乱読のワタシだがそういう忙しいモノを続けて読んでいると、息抜きに優しく浸み込むものが欲しくなる。
「木練柿(こねりがき)」(12年 あさのあつこ 光文社文庫)
図書館でたまたま手に取って、少し読んでみた。藤沢周平の時代小説のように出だしから快くて、声に出して読んでみたいと思った。声にすると、それが自分の声でもココロが揺すられる気がする。藤沢の作品は近年読むよりも、YouTubeの朗読を聞くことが多い。ナイトキャップがわり。この作品も上手な朗読で聞いてみたいとも思うが、あさののこの作品はミステリーの謎解きみたいなところもあって、藤沢のソレのようにストーリーの流れに身を委ねることもできない。立ち止まりながら謎解きをするのもそれはそれで楽しい。
あさのあつこは「バッテリー」(03年 角川文庫ほか)くらいしか知らなかったが「木練柿」の情緒豊かな文章が気に入ってしまった。裏表紙の解説によれば「木練柿」はシリーズの第3作にあたり、ほかに「弥勒の月」「夜叉桜」があるという。うーん、まいった。また読みたい本が増えてしまった。
日経新聞の日曜欄が山本周五郎だったので「樅ノ木は残った」を探したのですがどこの本屋にも無い。山本周五郎のインデックスすら無い。上中下3冊というのも、古い文庫で1冊700円位するのにも閉口。「さぶ」を買いました。
返信削除