2022年1月15日土曜日

ロバの耳通信「淵に立つ」「不安の種」

「淵に立つ」(16年 日・仏合作)

日・仏合作と言いつつ、スタッフに誰もフランス人は見当たらない。製作会社に日・仏のテレビ放送会社の名前があるが、映画を見てなるほどと感じたところが、脈絡のなさか。
日本の映画は、ストーリーが途中で切れることはほとんどなく、稀にそういう切り方をしても、あとで追憶シーンとかで必ず繋ぐ。フィルムがブツッと切れて、また別のコマから始まり、あれ今の何だみたいなところは、フランス映画にしかみることができないところだが、この「淵に立つ」にはソレが多かった。監督も脚本も日本人だから、誰かの影響をうけたのかもしれない。

殺人の罪で服役していた男を浅野忠信が演じているが、精神病ではないかと思わせる表情の変化は浅野自身によるものかと疑うほどの好演。鉄工所長の妻役の筒井真理子が印象に残った。敬虔なキリスト教信者でありながら、夫の友人と不倫に走る。裸も恍惚の表情もないのに、この色っぽさは何だ。知らなかったが、ドラマとかで結構有名な女優らしい。
見終わって、この映画の主題は何だろうと考えてみた。罪と罰、善と悪、生と死、そんな対比するものの淵にワレワレが立っているということか。無常や倫理観の異なる異質さを感じてしまったのは私の日本人の血のせいか。

「不安の種」(13年 邦画)

同名の漫画雑誌連載作(07年~中山昌亮「週刊少年チャンピオン」)の実写版だという。映画は原作漫画の気味悪さ、不条理さをよく出している。コントラストの強い映像が気味悪さの汁を付けたまま、見ている者の体にまとわりついて、払っても払っても取れない。

オープニングは道路を進むメダマたちの大群。神経のスジや血管を引きずったメダマたちを、ぶちぶちと車が轢いてゆく。メダマは不幸の始まり、気味悪い歌を車の中で合唱する幸せそうな一家。あ、ヤバいと思わせる。そのあと映画の中に出てくるのは、バケモノやメンヘラ(同列に置いてはいけないのだが、とにかく気味が悪いのは一緒)。
見はじめからラストのまたまたメダマたちの行進まで、不安だらけで気の休まる時間はない。半端な怪談映画より怖いぞ。続編、期待。

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