2025年1月9日木曜日

ロバの耳通信「キルスイッチ」「ブラッド・スローン」

「キルスイッチ」(17年 米独)

面白い時代になったものだ、国内封切り前の新作映画をどこかの誰かが、ちゃんと日本語字幕を付けてアップロードしてくれている。動画だけなら試写版や有料動画サイトからの転がしでアップロードすることはそう大変だとは思わないが、セリフのデクテーション(文字)を専門サイトからダウンロードして、自動翻訳サイトで日本語にして、もちろんそのままで楽しめるほど自動翻訳ソフトはイカしてないから、イチイチ普通の日本語に直して動画と同期させてくれている。プロにかかれば大したことのない作業なのかもしれないが、たぶん何人かの「誰か」の手を経たものにちがいない。ダウンロードせず見るだけなら罪にもならないらしい。とにかくその「誰か」たちに感謝。

「キルスイッチ」は無限エネルギーをどうにかこうにかするというSF映画で、あまりにもぶっ飛んだストーリーだから理解しようもない。SFもそれなりに説得力を持たせてくれたほうが面白いとのだが、原作は10分のショートフィルム「What's in the Box?」ということだから、丁寧な作り込みなどはムリなのかもしれない。

主演のダン・スティーヴンス(ディズニーの新作「美女と野獣」(17年 米)で美女エマ・ワトソンと組んだ野獣役:うん、こっちもすごいミスキャスト)が元宇宙飛行士の役でSFX画像の中を、相変わらず目の周り真っ黒のパンダ化粧のボンドガールのべレニス・マーロウ(「007 スカイフォール」(12年 英米))と武器を積んだドローンに追っかけまわされる。

PCゲームのように画面の切り替えはシャットダウンサインや立ち上げのディジタル表示なんかが画面に表示され、一人称視点(主役の目を通して進められる)シーンの多さにゲームのような面白さもあるがが、脈略がわからない切れ目だらけの映像は一貫性がなく、ストーリーをより分かりにくくしている。
ストーリー展開におけるゲームとの本質的な違いは、この映画は過去の軌跡も将来の選択もなく、難病の息子や体の弱い妹の挿話が脈絡なく突っ込まれているから、主題であるはずの「家族のために戦う」主人公の存在意義をダイナシにしている。動きに必然性がない主人公が映画の中でイライラしながら何度も叫ぶ「一体どうなってるんだ」をそのまま監督ティム・シミットにお返したい。

「ブラッド・スローン」(17年 米)

原題の Shot Caller は刑務所のスラングで、リーダーの意味。
エリートだった男が、飲酒運転で死亡者が出てしまったために、刑務所にはいることに。こういう場合、日本だと交通刑務所だとおもうのだが、この映画では、凶悪犯などと一緒。アメリカの刑務所については、映画なんかで知る限りだが、ここも酷い。犠牲になる弱者とそれを犠牲にする強者しかいないと知った主人公は、そこで戦いを続け、家族への脅しをちらつかせるリーダーを殺し、結局終身刑ながらリーダーに上り詰める。日本の刑務所についても本や映画でしかしらないが、アメリカの刑務所の違いに驚く。アメリカの刑務所は何倍も怖い気がする。
警察にチクったため主人公に殺されてしまうチンピラ役にジョン・バーンサルが出演、入れ墨はフェイクだとしてもいかにもワルの仕草がそれらしかったが、アメリカテレビドラマ「パニッシャー」シリーズ(16年~)で演じたフランク・キャッスル/パニッシャーは、極悪を倒す正義の味方。長くみたせいもあって、結構好き。wikiによれば、みかけよりずっとエリートらしい。

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