
夫婦のお互いへの想いや気持ちの機微をこれほど丁寧に書き込んだ作品をほかに知らない。300ページ強の物語は、緊張と静けさ、不安と安心の繰り返しで、読み始めたら食事中も本を離したくなかったほど。ずっとワタシの感情を引っ張って、ラストは詰めていた息を吐き、無事たどり着くことができた安心感に涙してしまった。こういう本を読みたくて、本を読み続けていたのだと、改めて思う。それにしても、普段なんと遠回りをしていることか。
これほど思い入れを持って読んだ本はずいぶん久しぶりな気がし、同時にこういう作品をもっと読みたくなった。
「ラニーニャ」(16年 伊藤比呂美 岩波現代文庫)
書名が気に入った、表紙も。裏表紙の解説”子連れで向かった先はカリフォルニア”の釣りも、久しぶりの岩波文庫も好ましかったのに、読みだした数ページがひらがなだらけの口語で、段落の取り方もなんだかオカシイ。文章は散文といえば聞こえはいいが、脈絡なしの支離滅裂、ゼンゼン追いて行けない。
あわてて、著者紹介をチェックしたら「詩人」だと。あー、そうかとひとり納得、ワタシのアタマじゃ、この詩人の文章は理解できないと。3中編のうち2編は芥川候補作だと。ほー、そうかい。自分に難解なものをしたり顔で、良かったよと誰かにひけらかすほど若くもない。懲りて、しっぽを巻いて逃げるだけ。
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