「ドラゴンフライ」(16年 河合莞爾 角川文庫)
解説によれば河合のデビュー作は横溝正史ミステリー大賞受賞作「デッドマン」で、この「ドラゴンフライ」はその第2作だと。「デッドマン」とほぼ同じ刑事たち、遺体から頭部、胴体、手足が持ち去られるという奇想天外なストーリー。「ドラゴンフライ」も臓器を抜き取られた猟奇死体が出てくる。前作を読まずにおいて比べるわけではないが、猟奇には奇想天外の展開があって面白い味付けにしても横溝正史や江戸川乱歩並みの筆の力がないとホラ話だけでは飽きられるよ。

「ドラゴンフライ」は完全犯罪をもくろんだが、腕利きの刑事たちに謎解きされるというスジ。ただ、その謎解きの解説が長すぎてダレる。うん、うん、トンボについても蘊蓄もたっぷり聞かせてもらったし、ほかに類を見ないトリックの手口も披露してはもらったが、あまりにとんでもないトリックだから、そんなのありかよと途端にミステリーとしての興味を失う。これからも期待して読みたい作家ではないかな。
序盤に目の見えない少女と仲良しの二人の少年が登場し、彼らが最後までこの物語のカギを握る。

たまたま同じ時期に読んでいた「逢魔が山」(17年 犬飼六岐 光文社文庫)は、偶然にも目の見えない弟を可愛がる兄とその仲間たちが禁忌の逢魔が山に迷い込む冒険物語。勇気や友情を主張していて子供のころにたくさん読んだ冒険小説を思い出して思い出にひたることができた。「ドラゴンフライ」はトリックや謎解きに溺れ、目の悪い少女と少年とで語ろうとしていた主題がどこかに忘れられたのではないかと。
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