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会社から出ようと表に出たら、小雨が降っていた。置き傘を漁ろうと建物に戻ったら、同期入社の女のコに声かけられた、もう帰るのとかなんとか。雨をやり過ごすために近くの喫茶店、にしては明るく広かったからレストランかもわからない。大きなホテルのカフェのイメージ。そこで何かを飲んでいるときに、女のコが、ねー、靴を買ったのよと足元を見せてくれた明るい空色のパンプス。
いいね、前の赤いのもよかったけれどと褒めたら、ワタシだって靴くらい変えるわよと、ツンと口を尖らせた顔も笑っていた。
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二人掛けの新幹線のテーブル越しにそのコが、CDケースにいれた絵葉書風の写真集を見せてくれて、こういうところに行きたいねと。宮城の自然を紹介したとてもいい写真で、夢とは思えないほどの鮮やかな色合いだった。
まるっきり、夢ー想像の世界だけれども、短くカールしたそのコの髪やシャンプーの香りまで感じていたから、「なんだか」嬉しかった。
こうやって、書きとめておけば、あとになって、空色のパンプスとか、向こうのレジで笑いながら手招きしていたそのコのことをまた思い出せるのかな。
「波のうえの魔術師」(03年 石田衣良 文春文庫)
まいったな、面白くて。やらなければイケナイ事がたまっていて、本当は本なんて読んでるときじゃないのに、夢中になって読みふけってしまった。ページに指をはさんで、ほとんど片手だけでゴハンを食べたことなんて近年、ついぞなかったのに。”マーケットと恋に落ちた”主人公が、融資付き変額保険で老人たちを食い物にした銀行を相手に、株取引の師匠と共に戦うという青春小説。”絶対に損はさせない”と主人公を通して、石田が読者に約束をしていたが、大儲けだった。
はまってしまう予感がする。石田衣良のすべての本を読みつくしたい欲望が膨らんできている。いかん、いかん、そうばかりもしておられないのだ。
「うれしい悲鳴をあげてくれ」(14年 いしわたり淳治 ちくま文庫)
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著者は元ロックバンドのメンバーで作詞家、プロデューサーで結構有名な方らしい。短編集の2つほどで挫折。あとがきで鈴木おさむのおすすめの5編のうちトップ3編を追加で読んでみたが、気持ちは変わらず。奥付をチェックしたらほぼ1年で第16刷だというから、結構な売れ行き。ファンなのかこういう本が好きなヒトもいるのだろう。
表紙の写真の膝の白さがとてもいい。
近年、ちくま文庫を読むことがほとんどなくなっている、そんな気がする。
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