2019年9月14日土曜日

ロバの耳通信「84★チャーリー・モピック ベトナムの照準 」「テイク・シェルター」

「84★チャーリー・モピック ベトナムの照準 」(88年 米)

偵察作戦に同行した軍の映画カメラマンの目でGIたちを情緒豊かに描いている。映画の最後には小隊メンバーのほとんどを失い、カメラマンも死んでしまうのだが、ほぼ同年に多数公開された「プラトーン」(86年)、「ハンバーガー・ヒル」「フルメタル・ジャケット」(87年)、「7月4日に生まれて 」(89年)ほどの悲惨さはない。高揚でも反戦でもない、この映画、「バット★21」「ブラドック/地獄のヒーロー2、3」(85年、88年)などと同じく、中途半端さになんだか落ち着かない。

ベトナム戦争を題材にした映画で最も記憶に残っているのがオリバー・ストーン監督の「天と地」(93年)ベトナム難民生まれで若くして亡くなったヘップ・ティ・リーとトミー・リー・ジョーンズの悲恋物語で話題にはなったが、哀しすぎて売れなかった映画だ。




「テイク・シェルター」(11年 米)

妻と耳に障害を持つ娘と平凡な暮らしをしていた工事現場で働く男が竜巻に襲われる夢を見て、その恐怖に囚われてしまい、ついには自宅にシェルターを作るという物語。
統合失調症というのだろうか、悪夢と脅迫観念の連続に仕事も失ってしまうのだが、名優マイケル・シャノン演じるこの男。統合失調症だったという母親の遺伝も心配しつつ、自らの不調にも追いつめられてゆく迫真の演技がいい。監督・脚本のジェフ・ニコルスの力もあるだろうが、妻役を演じるジェシカ・チャステインの演技が光っている。ラストで竜巻に襲われるシーンがでてくるが、これが本当に竜巻なのか、男のココロの中のできごとなのかわからない。
時代設定が明らかではないが、アメリカの田舎町で生きる平凡な家族の暮らしが描かれている。日曜には教会に行き、実家で老夫婦を入れての食事。親の時代からお世話になっているホームドクター、ママ友たちとのパーティー、医療保険の仕組みやら薬局でのやりとりなど「普段着のアメリカの暮らし」が、90年代にアメリカで暮らしたことのあるワタシには懐かしかった。情景は懐かしい映画だが、精神的にまいってゆくマイケル・シャノンの表情が辛すぎて、また見たいとは思わない。
多数の映画賞を獲得しながらも、興行的には失敗作と言われているのは、この暗さのせいか。

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