2019年9月6日金曜日

ロバの耳通信 あきらめた2冊「リピート」「ROMMY 越境者の夢」

「リピート」(07年 乾くるみ 文春文庫)

時間ループ、というのらしい。要は時間を行ったり来たりができることで、まあタイムマシンのようなものか。こういうものには時間をさかのぼると、未来が変わるというパラドクスについて長い説明があるのだが、この本でもグダグダ書いてあった。

解説によれば、時間ループを題材にした同じような小説は沢山あるらしい。登場人物がひとり減りふたり減りするのもよくあること。裏表紙には「リプレイ」+「そして誰もいなくなった」に挑んだとある。何だ、パクリかと。こういうとんでもない話は、最初に考えた作家は偉いと思うのだが。とにかく、この「リピート」は時間ループを正当化させるのに時間をかけていて、やたらと理屈っぽい。登場人物の描き分けもいいかげんで、なにより脚本がキチンと書けていない映画のように、成り行きだけで進んでゆくから退屈このうえない。500ページの長編だがガマンしてやっと140ページ、本当ならここらで面白くなるはずのところに行きつかず放棄してしまった。
時間ループと似たハナシだったら、記憶が一日でリセットされるという病気にかかった女性と彼女に恋をした青年が毎日恋に落ちるという「50回目のファーストキス」(18年 邦画)がよかった。この映画では、記憶が一日でリセットされる病気に小難しい理屈を付けず、事故の後遺症とサラっと言ってしまっているから、そっちはどうでも良くなって、毎日恋に落ちるふたりの真剣さ(ワケよりナカミ)を祝福したくなった。

「ROMMY 越境者の夢」(98年 歌野晶午 講談社文庫)

また、失敗してしまった。夕刻の図書館、「もうすぐ閉館しますので貸し出しの方は急いでカウンターに」の声を聞いて、タイトルと講談社文庫の背表紙、新しい文庫本ということだけで、よく見ずに掴んで借り出してしまった。家に着いて、さてどれから読むかと借り出した本を広げていて気付いた。「ゲッ、歌野晶午ではないか。」いままで何冊もチャレンジしていて、どの本も出だしのせいぜい数十ページで放棄していた作家だ。そういう偏見が私の頭に刷り込まれていたせいか、この本も50ページと進まないうちに嫌気がさして放棄。ROMMYというミュージシャンが殺され、犯人は誰かというまあ、ミステリー小説らしかったのだが。
歌野の小説の何がイヤなのか、どう気に入らないのか自分でも全く説明できない。相性を言うほど深く付き合ったわけでもない。私も先行きそう長くはないし、読みたい本はいくらでもあるから、気に入らない本は読まなければいいと自分に言い聞かせてはみるのだが、いかにも寝覚めが悪い。まいったな。

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