「インデックス」(17年 誉田哲也 光文社文庫)
姫川玲子シリーズ「ストロベリーナイト」(08年 光文社文庫)ほかで、すっかり姫川ファンになっていたから、姫川警部補の活躍短編集ということで期待しながら読み始めたが、すっかり戸惑ってしまった。「小説宝石」など月刊誌などで発表されたものを搔き集め文庫にした8編の短編集。途中でやめようと思ったのだが、冷静に考えれば、面白くないわけではなく、誉田の作品に過度の期待をし過ぎただけかと。最終の2編「夢の中」「闇の色」が連作になっていて、わが子を捨てても浮かぶことの出来なかった女を描いた掌編が感動した。400ページ強、最後まで読んでよかったとしみじみ。誉田も姫川もやっぱりワタシを裏切らなかった。
姫川玲子シリーズの面白さは、姫川をはじめ一緒に働く刑事たちの突出したキャラクター。”ガンテツ”勝俣警部補、”有罪判決製造マシン”日下警部補、”たもっつあん”石倉巡査部長、ほかたくさんの刑事たちが実にユニークに描かれている。ワタシの好みは自らを、姫川と”赤いワイヤーロープで結ばれている”と横恋慕し、インチキ関西弁で姫川を口説くことをやめない楽しいキャラの井岡巡査部長だ。
「ママの狙撃銃」(08年 荻原浩 双葉文庫)
裏表紙の解説に”荻原浩の新たな地平”とあって、イヤな予感がした。流行作家が新機軸を打ち出したと書かれていたら、ワタシの読書経験から、それは著者の著者らしさの喪失であり、「だいたい」は面白くなくなると思っているから。「だいたい」と書いたのは、ハードボイルド作家の北方謙三が「三国志」(01年~ ハルキ文庫)ほか中国古典でワタシを虜囚にしてしまった例外を知っているから。
萩原については面白い作品がいくつかあったという程度の印象だったのだが、この「ママの狙撃銃」は全く好みに合わなかった。ママは幼い頃アメリカで育ち、暗殺を生業にしていた祖父に銃の扱いを教わり、祖父の友人の誘いを受け一度だけだが暗殺の仕事をしたことがあると。日本に戻り、今は夫と子供ふたりの平凡な暮らしの主婦に、25年ぶりに暗殺の仕事が舞い込むーと、まあ、とんでもないスジ。萩原は文章がうまいのだからハードボイルドに徹すれば面白い題材になったと思うのだが、ユーモアとドタバタコメディの味を付けすぎて、中途半端なものになってしまった。うーん、荻原のマイナスポイントが増えた。
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