2021年6月23日水曜日

ロバの耳通信「世界の終わり、あるいは始まり」「カップルズ」

「世界の終わり、あるいは始まり」(08年 歌野晶午 角川文庫)

ずっと、歌野晶午を避けてきてきた。いままで何冊かとってみたが、ほとんどは最初の数行で、頑張って数ページで断念。たまたま表紙に惹かれて借り出した文庫本がコレ。著者紹介をチェックしたら、「このミス」で1位をとったことがあるという。そうかそうか、それなら面白い本があるのかもと。
中学生の息子が連続誘拐殺人の犯人らしいと知った父親の苦悩を描いている。500余ページの半分を気に入らない文章に引っかかりながらも読んだ。文章がクドイのだ。切れ味が悪いと言ってもいい。セリフがやたらと長いし、口語と文語が混じっていて不自然だ。うん、ただのワタシの感想だが、とにかく気に入らなかった。ただ、”人の不幸は、自分とは関係ない”ことを何度も繰り返す会社員である父親に、ワタシは共感し、息子が連続誘拐犯人らしいと知ったときの驚きと落胆もわかるような気がした。のこりの半分は、その後の物語の展開を読者に委ねた。ひどいな、この結末は。
まあ、いいか、半分は面白く読めて、とにかく最後まで読み通すことができた。うん、だから冬の半日、窓際の明るい陽射しの中の時間をこの本で過ごせたことでよしとしよう。歌野のこのミス受賞作品が「葉桜の季節に君を想うということか」(03年)だと。もう一冊だけ読んで見ようと思う。

「カップルズ」(13年 佐藤正午 小学館文庫)

作家の視点で身の回りに起きたことを描いた7短編集。どれも、起こりそうもないことをありそうな話として書いていて、そのテを苦手とするワタシはすっかりダレてしまった。ワタシじゃない誰かが佐藤正午の本の解説の中で、”後で思い出そうとしても、どんな話だったか中々思い出せないのが多い”と書いていて、いたく同感。

「アンダーリポート/ブルー」(15年 小学館文庫)食いつきは良くなかったが、結局ハマってしまった。直木賞受賞作「月の満ち欠け」(17年 岩波書店)何度か読んで、やっぱりハマった。「5」(10年 角川文庫)作家が主人公で超能力モノ。「ダンスホール」(13年 光文社文庫)はイライラが募っただけ。「カップルズ」もハズレ、しかもなんだこの気の抜けたような表紙は。もう、いいかな佐藤正午。


1 件のコメント:

  1. 新しい小説、新しい作家に取りかかる意欲に毎度驚かされています。自分は視野狭窄で、通勤の如く、モダンタイムスのように、日々を繰り返しているばかりです。

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