「無宿人別帳」(96年 松本清張 文春文庫)
手にとることが何度目になるのだろう。初出「オール読物」(52年)だというし、初めて読んだのが10代で、単行本だった記憶があるから古い付き合いだ。
この短編集の主人公は皆、理不尽に苦しめられる男たちばかりである。これでもか、これでもかと理不尽にいたぶられる。よくこれだけ哀しい物語が書けるものだと思う。これより、マシだ、こんなに不幸ではないと感じる。こういう幸せの感じ方もあってもいいのだろう。
松本清張の小説に幸せいっぱいなんて人は出てこない。松本清張が好きなのは、暗い所から明るい方を見たいからなのかもしれない。
「ジャックナイフ・ガール 桐崎マヤの疾走」(14年 深町秋生 宝島社文庫)
深町秋生の小説はメッチャ面白いか、ゼンゼン面白くないかのどっちか。これはメッチャ面白いほう。近未来の荒廃した東北が舞台。不良少女”切り裂きマヤ”が痛めつけられながらも活躍するクライム。ノベル5連作。10代にも見える、細身、ムネぺったんの可愛いコらしい、読みながら、思わず頑張れ~のエールを送っている自分に気付いた。
「時限病棟」(16年 知念美希人 実業之日本社文庫)
初めて読む作家では著者紹介をチェックする習慣がある。現役の医者だと。大いに期待。裏表紙の作品紹介では”大ヒット作「仮面病棟」(15年)を超えるスリルとサスペンス。圧倒的なスピード感”だと。唯一ひっかかっていたのが、作者の名前。沖縄出身だから知念はあるにしても、美希人は凝ったペンネームくさい。凝ったペンネームをつけた推理小説作家は面白くない、というのがワタシの持論。調べてみたが、本名かどうかは未だに不明。
出だし好調。文章はうまい。調子に乗っていたら24ページ目にクラウンの絵。おいおい、謎解きゲームか、と訝りながらも読み進めたら、やっぱり謎解きゲーム。実はパソコンゲームも謎解きは好きじゃない。読み進めるたびに、そろそろ犯人はわかったかね明智くんと聞かれている気分。舞台設定も登場人物もストーリー展開も作者のアタマの中でひねくりまわされて作られたと分かるから、そんなものに付き合いきれないと半分も進まないうちに棄権。読書サイトで真犯人に至るネタバレをチェックしたけれど、ああそう、くらいの感想。
途中までしか読んでいないので何かを言うのは卑怯だとは思うが、残り少ないワタシの読書人生、つまらないと感じる本につきあうつもりはない。
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