2020年1月10日金曜日

ロバの耳通信「るり姉」「四階の女」

「るり姉」(12年 椰月美智子 双葉文庫)

今回は、宮下奈都の解説を最後に読んだ。裏表紙の釣りの”ラストの静かな感動が胸いっぱいに・・”。宮下の解説がついていること、読み出しの数ページで、あ、これはイケナイ、きっと泣かせられる、大泣きさせられると読み終える前から盛り上がっていた。3人姉妹の叔母にあたる「るり姉」の人物描写に愛おしさを感じたからだ。読み始めて寝床でカミさんに、途中まで読んだことを明かし、予想通りのことが起きる虞を話したら、アンタは甘いと。怪談映画で、最後のカタストロフィーの前に、何でもない積み重ねがあって、だから最後が一番怖い、そんな展開を予想していた。

で、読み終わってまだ感動に浸っているうちに、宮下奈都の解説を読んで、おいおい、なんでワタシが思っていたことを活字にしてくれているんだと。ここでワタシの感想を書いてみてもしょうがないか。つまりは、宮下がワタシの気持ちを100%以上書いてくれているから。
うん、ワタシの予想の、るり姉が死んで「大泣きさせられる」なんてことはなく、「静かな」満足感を十二分に得ることができた。はじめての椰月美智子は、児童文学者だと。著者紹介を見て、舐めていた。ごめんなさい。いい作品だった。奥付きの広告に同じ著者の「未来の息子」が既刊とあった、読んで見よう。

「四階の女」(10年 明野照葉 ハルキ文庫)

聴覚が過敏な主人公がアパートの上の部屋の住人の暮らしを想像し殺人犯だと思い込むというスジ。ただの神経症の女じゃないか、これ。集合住宅に住んでいると上下左右の住人の出す物音は気になるものだし、キモチはわからないことはないが。友人を通じて同じ聴覚過敏の男性との出会うなんてストーリーは作り過ぎ。元本は「闇の音」(ハルキ・ホラー文庫)だと。神経症の男女なんて確かにホラーに違いない。ただ、偏見の誹りを甘んじながら言うと、神経症とかいう病気は正常と異常の境目のないところで片方に偏っただけだと思う。自分の立ち位置も曖昧だけれどワタシもたぶん正常ではない。だからこの神経症の女に惹かれた神経症の男。どっちの気持ちにもなれる。そして、作品には書かれていないが、破滅の結末も。

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