2020年2月23日日曜日

ロバの耳通信「1917 命をかけた伝令」「ミッドサマー」封切り中

「1917 命をかけた伝令」(19年 米、英)原題:1917

今年のアカデミー賞で「パラサイト 半地下の家族」(19年 韓国)がグランプリを獲ったとのニュースで、アカデミー賞も地に落ちたという気持ちになっていた。韓国の格差を描いたこの作品は、確かに面白かったが、過去のグランプリ賞作品と比べて、「映画を見た感」の不足というのだろうか、まとまりすぎていて、「映画を見た感」の感動ー暗転した映画館で映画の終わりを惜しむような音楽が流れ、エンドロールの中で席を立ちたくないそんな気持ちにはなれなかった。
「1917 命をかけた伝令」は、”只の”視聴覚効果賞だったが、この作品は感動した。アカデミー賞の各賞を受けた全部の作品を見た訳ではないから、こういう言い方もどうかと自分でも思うが、少なくとも「1917 命をかけた伝令」のほうが「パラサイト・・」より、「各段に」良かった。

第一次世界大戦独軍の偽装退却を見破った英国軍司令部より、前線部隊へ攻撃中止命令を伝えるために敵中を横切る伝令の役を二人の若い英俳優が演じた。二人のカメラ目線を中心にしたカメラワーク(ロジャー・ディーキンス)のすばらしさに加え、特に照明弾のオレンジ色の光の中に廃墟のような建物の影が動くところなど、映画館の大きなスクリーンで見なかったことを後悔。
音楽(トーマス・ニューマン)も主張しすぎることもなく、それでいてロングショットのシーンとの違和感もなく、サウンドトラックを聞けば映画のシーンを思い出せそう。ラスト近く、疲れた英軍兵士たちが”ヨルダンへの旅”の歌を聞き入るシーンがあったが、染み入るいい曲だった。

「ミッドサマー」(19年 米、スウェーデン)原題:Midsommar 夏至祭

数日前から日本公開中のホラー映画。ネット、雑誌記事の映画批評など前評判がやたら良くて「恐怖」「ゾッとする」などの言葉が並んでいたから、一体何が起きるかと2時間半の長編をガマンしながら見た。グロいシーンにハッとすることはあったが、全くの期待外れ。怖さとグロは違う。ハッキリ認識したのがすでに見た人々や多くの批評家、Rotten Tomatoes <米の映画批評サイト>と、私の感覚がかなり違うということ。

90年に一度催されるというスウェーデンの夏至祭りに招待された大学生グループが、祭りの人身御供にされてしまうという物語。
物語の核になっているのが神経症の女子大生ダニーとその恋人クリスチャン。ダニーは同病の妹が両親を巻き添えに無理心中してしまったことでトラウマがひどくなり、クリスチャンはダニーを重荷に感じながらも、一緒にスウェーデンに連れて行くことに。映画の出だしから、私が感じていた”こんなメンドウクサイ女はやめろ”は、ラストで焼き殺されるクリスチャンを見ながら、ダニーがニヤリと微笑むシーンを見て、”ほらみろ、こういう女はやめろと言ったじゃないか”とモノローグしていた。ポスターはダメだよ、こんなんじゃ。

映画の舞台が人里離れたところにある共同生活者たちの楽園として描かれていることが興味深いが、こういうシャングリラでの夢のような暮らしにつきものの、白っぽいワンピースやら花の髪飾り、あげくはフリーセックスを連想させるシーンなど、ちょっと作りすぎ。正直、あこがれないこともないけれど。
人民寺院を率いたジム・ジョーンズによる集団自殺事件(78年 ガイアナ)をヒントにした「サクラメント 死の楽園」(13年 米)を思い出した。

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