2020年2月2日日曜日

ロバの耳通信「Bloodline」「提報者 ES細胞捏造事件」

「Bloodline」(19年 米 邦題未定)

面白かったが日本じゃ当たらないだろう、キモすぎて。もしかしたら、公開しないかも。
高校の生活指導員の主人公(鋭い目つきのショーン・ウイリアム・スコットが好演、なにもしてなくても怖い!)が生徒の悩みである父親による虐待などを聞いて同情し、生徒たちの父親を殺してゆく。生活指導員は幼い頃母親に暴力をふるっていた父親を殺したというトラウマに悩まされていた。
主人公の妻も夫の犯行を知り、それを隠蔽するために生徒を殺し、主人公の妻の育児指導で親身じゃなかった看護婦を殺す。主人公、その母、妻がベビーベッドの中の赤ちゃんを見つめるところで映画は終わっている。Bloodlineは血脈みたいな意味だが、ここでは「血のつながり」とか「争えない血」とか訳せばいいのだろうか。
Bloodlineのままかブラッドラインとカナに直しただけだと、ゾンビ映画とかすでにいくつかあるから、邦題の付け方は悩むところだろう。

「提報者 ES細胞捏造事件」(14年 韓国)原題 Whistle Blower

この作品は、ファン・ウソク事件という韓国ソウル大学の黄禹錫(ファン・ウソク)教授がヒトの体細胞からES細胞の取り出しに成功したというノーベル賞ものの論文が偽造だったという実話(03-04年)をもとに、MBS放送(映画ではNBS)のテレビディレクターがファン教授やそれを支持する市民からの圧力にも耐え、報道放送を強行することで、ファン教授のウソを暴く。

真実を市民に伝えようとするテレビディレクターの抵抗勢力となったのが、初めてのノーベル賞への希望に沸く韓国経済界、市民。お得意のロウソクデモや手書きの看板でのアピール。なんだか、昨今の反日デモを彷彿させる風景。これが韓国の日常の風景なのか。それをひっくり返す契機となったのが、ディレクターの部下のADによるネット情宣活動。既述の反日デモなどにも、感情的になるだけでなく、ネットやSNSを活用という対応もあるのではないかと。映画はいろいろなことを教えてくれる。

映画では、韓国の感情的で移ろい易い市民の感情についても、ディレクターが利用したタクシー運転手の事件前後の対照的な反応を織り込むことで自己反省しているように見える。

この映画、ES細胞(胚性幹細胞)について、卵子取り出された多能性をもつ胚芽細胞がクローン技術をもってしても、他人の体にいれれば拒絶反応を起こすことを説明するなどをキチンと説明していてこの映画をスキャンダルの暴露だけにとどめない監督の真摯な対応に好感をおぼえた。iPS細胞(人工多能性幹細胞 山中教授ほか)との違いなどは、ニワカ学習を始めたのだが、根性が続かなくて断念。ESやiPS、STAPなど、進歩著しい世界だから、10年後には、また誰かが新しい「定説」を唱えているかも。

この韓国映画を見たのは最近のことで、STAP細胞騒動(14年 小保方晴子)の事を覚えていたから、STAP騒動をもとにしたいつものパクリ映画かと思っていた。よくできたスジなので、調べてみたらファン・ウソク事件をもとにしたものだと。モノシリのカミさんに聞いたら、え?そんな大ニュースを知らなかったのかと。まいった。

ワタシにとってのファン・ウソク事件当時(03-04年頃)は、長く勤めていた会社を早期退職し、転職先で新しい職場環境に右往左往していた頃か。カミさん曰く、よくそんな世間知らずで生きてこれたねと。確かに。

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