「さまよう刃」(19年 東野圭吾 角川文庫)
書名に見覚えがあり、裏表紙の解説を読むとスジにもなんとなくデジャビュ感があったのは、映画が先だったかららしい。同名の邦画(09年 寺尾聰主演)も韓国映画(14年)も見ていた。さすがに手の内も結末もわかった小説というのはやはりつまらない。少年たちに暴行され殺された娘の仇をとる父親なんて復讐モノは、邦画より韓国映画のほうが合うような気もする。邦画の寺尾聰は、なんだか頼りなく復讐に燃える父親らしくなく、韓国の名優チョン・ジェヨンの押えた表情ながらも憎しみの激情が伝わってくる素晴らしい演技に脱帽。
「署長刑事 大阪中央署人情捜査録」(11年 姉小路祐 講談社文庫)
29歳で大阪府警中央署の署長に着任した”もさいながらも正義に燃える”キャリア刑事が、警官による飲酒ひき逃げ事件を再捜査し冤罪の証を立てる。近年、賛否で話題になることが多いIR<インベスターリゾート:統合型リゾート>についての話が出てくる。この本、10年前の書下ろし文庫なのだが、公営トバクの誘致のウラにいる者たちについて言及しているのが興味深い。
初めての作者で、テンポの良い展開で面白かったが、唯一残念だったのが、多用される関西弁のセリフ。速読を旨としているのだが、聞きなれない関西弁に何度も躓いて、読むのにいつもよりずっと時間がかかってしまった。
「マル暴甘糟」(17年 今野敏 実業之日本社)
今野の刑事小説の特長は、色付けされたキャラの刑事の活躍と爽快感か。コワモテ、マジメな小説もなかなかいい作品もあるが、「マル暴甘糟」の”甘糟は「俺のことなめないでね」が口ぐせのマル暴刑事”の設定が面白いし、今野の小説のステレオタイプになりつつある、刑事とヤクザの心の交流もいい。暗くて重いばかりの刑事モノも捨てがたいが、たまにはこういう肩のこらないのもいいよぉ。
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