2020年3月13日金曜日

ロバの耳通信「スナーク狩り」「ワイルド・ソウル」

「スナーク狩り」(11年 宮部みゆき 光文社文庫)

宮部みゆきというだけで「火車」「理由」とか「模倣犯」とか本の名前はすぐに思いつくのだが、どういうスジだったのかも思い出せない。テレビドラマや映画も見た記憶があるのだが。今回「スナーク狩り」を読んで、もしかしたらと思ったことがある。ワタシは本も映画も思い入れが強くて、気に入ったら何度も読んだり、見たりして感動を反芻する習慣があるのだが、そこまで記憶が抜けているとすれば宮部みゆきがワタシの「お気に入り」じゃなかったということか。
「スナーク狩り」はストーリーテラーとしての宮部の力量を感じさせる作品だとは思う。ただ、金持ち女が元婚約者の結婚式に猟銃を持って乗り込み、腹いせに自殺を図ろうとするなんて。しかも自殺の方法が二段式猟銃に鉛を詰めて自分を吹き飛ばすことを計画していたとか、作り過ぎだって。多彩な登場人物がステレオタイプに過ぎていて、それも作り過ぎ。どこかで使いたかったらしい「スナーク狩り」(ルイス・キャロル)の警句、火の出る釣り具、猟銃、何という病気だったか言葉を失う病気、ナントカという型式のベンツ、公衆電話がない特急などなど、宮部が作品のために仕入れたか貯めていた話のタネ。積み込みすぎだって。本作が宮部みゆきの代表作ではなさそうなので、こういう言い方もどうかとも思うが、もう沢山。

「ワイルド・ソウル」(06年 垣根涼介 幻冬舎文庫)

まいったなー、だから本はやめられない。眼は疲れるし、猫背の背中にもこたえるからちょっと減らそうと思うのだが面白い本があるとね、なかなか。たまたま手に取ったこの本、大好きな幻冬舎の本で”史上初の3賞ー大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞”だという裏表紙のツリに惹かれて読み始めたら、止まらなくなってまた夜更かし。面白い本に当たってしまうと生活のリズムが乱れてしまってしょうがない。

日本政府の甘言に乗せられてアマゾンの奥地で朽ち果てたブラジル移民の子孫たちが、政府にテロで復讐するというスジ。プロットは単純だが、ディテールへのこだわりが凄いぞ垣根は。上下巻1000ページ弱の長編を、最初ユックリ(辛苦の移民生活を淡々と描いているのでダラダラでは決してない)、スケールの大きさといい、物語の展開といい、中盤のトップから一気に駆け降りるジェットコースターのよう、しかも超高速の。気が付くと手に汗かいて、すこしコミカルのラストでため息つかせる、なんだこの作家の力量は。探してでも次作を読みたい垣根涼介。

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