「AI崩壊」(20年 邦画)
キャッチコピーは「その日、AIが命の選別を始めた」。近未来の日本が舞台。破綻した日本経済を立て直すために、高年齢者や病人などの社会的弱者を抹殺し、社会の”軽量化”を目指す選別プログラムを動かし始めたAIの暴走を止めるため活躍するAI開発者の主人公を描いたパニックサスペンス映画。
病気の診断や治療を目的に開発されたプログラムを、個人の情報入手や統制に使おうとした政治家や警察官僚をワルモノにして将来のAIの進め方に警鐘を鳴らそうとしたところは評価できるが、AI開発のありかたに曖昧なままの個人情報の危機感に結び付けようとしたコジツケに戸惑ってしまった。
主演に大沢たかお、ワキに賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典、松嶋菜々子、三浦友和ほか、ヤングアイドルからシニアまでそろえた邦画得意の仲良しクラブ配役がやや鼻についたが、巨大サーバー部屋やハッキングのそれらしいディテールなど、ワーナー・ブラザーズ配給でも恥ずかしくないくらいの出来。スタートの海岸の暗いシーン、ラストの墓参りシーンなど思い切ってカットし短くしたらもっとキレの良い作品になったかな。
「蜘蛛の巣を払う女」(18年 米・スウェーデン)原題:The Girl in the Spider's Web
おかしな邦題だと思うが、まあいいか。「ミレニアム」シリーズ3部作「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」の続編にあたり、このあと「復讐の炎を吐く女」、「死すべき女」と原作は続くらしい。
3部作のほうは、スウェーデン版、ハリウッド版ともに見ていて、いままでのハリウッド映画とは異なるツクリの映像に衝撃を感じ、今回の「蜘蛛の巣を払う女」もスピード感や疎外感(うまく表せないが、そういう気持ち)が斬新で良かった。今までのシリーズ作品と共通しているのはスウェーデンの冷たい空気と無機質な都市の風景、今回突出していたのが効果音の硬さと音楽(ロケ・バニョス)。
主人公の天才女ハッカーのリスベット・サランデルが、スマホとパソコンでSpider's Webに入り込み、不幸な女を助け男たちに復讐してゆく痛快さが快感。映画批評サイトRotten Tomatoesでは評価が低かったが、この数カ月で見た映画ではワタシ的にはベストに近かったのは、ストーリーの残酷さや展開の意外さが好みにピタリ合ってたせいか。さらに主人公役の英女優クレア・フォイが美人とは言えないものの、ワタシの好みの短髪ビンビンでオートバイで颯爽と走る突っ張りスウェーデン女風だったことか。
とにかく、夜中にスマホで見始めてすっかり夜更かししてしまったから、今度はPCの大きな画面とステレオヘッドフォンで、もう一回初めから見よう。
2020年6月28日日曜日
2020年6月22日月曜日
ロバの耳通信「トゥエルブY.O.」
「トゥエルブY.O.」(01年 福井晴敏 講談社文庫)
寝る前に読んでいて一旦閉じたが、夜中に目が覚めどうしても続きが読みたくなり、朝まで読んでしまった。こんな事はずいぶんなかった気がする。
事故を起こした自衛隊のヘリ操縦士の物語。彼を助け出した自衛隊員は「12」(トゥエルブ)という名のテロリスト。「12」の武器は自己増殖型コンピュータウイルス「アポートシスⅡ」と秘密兵器「ウルマ」。「12」は日米政府を秘密文書「BB」を盾に米海兵隊の沖縄からの撤収を実現したが、さらなる企みがあった。
後半から本格化した戦闘場面からは怒涛の展開で、息もつけない。米国の戦後対日活動の真意、国政のふがいなさ、自衛隊の中途半端な地位についての福井の強い主張に辟易しつつも、繰り返し畳みかけられる論理展開に共感し、洗脳されそうになっている自分に気付く。少人数によるテロ活動やら自衛隊シーホークと米攻撃ヘリアパッチの攻防など出来すぎの感もあるが、グングン引き込まれてしまって、読み終わった時には大きな息をついた。乱歩賞を受けた作品だという。この物語の前節ストーリーともなる「川の深さは」(03年 講談社文庫)では地下鉄テロ事件を題材にした元警官と少年の物語で、生きる意味を考えさせ、強い共感を憶える作品である。
「トゥエルブY.O.」の続編とも言える「亡国のイージス」(02年 講談社文庫)では手に取った上下で約500ページの厚さに恐れをなし、同名の映画(05年)が先になった。海上自衛隊のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦「いそかぜ」がテロリストに乗っ取られ日本政府を脅すというスジは既視感があったが、真田広之、中井貴一、寺尾聰、佐藤浩市ほかのこれ以上考えられない配役と、福井得意の防衛庁情報局「DAIS」、化学兵器「GUSOH」、爆薬「テルミット・プラス」で、エンターテインメント性の高いものとなった。
福井の代表作「終戦のローレライ」(05年 講談社文庫)も未読である。文庫本で4冊あるらしい。「川の深さは」「トゥエルブY.O.」と読んできてわかったことは、読むのにエネルギーがいること。福井の想いが込められている分、サラっと読み流すことはできないのだ。映画化された「ローレライ」(05年)も見逃している。役所広司が太平洋戦争末期の潜水艦の艦長役だという。
読みたい本、見たい映画がまた増えている。福井の作品は漫画も多く、若者からの評判も良かったようだ。良かったようだと過去形で書かざるを得ないのは福井の本を読み始めたのがこの半年だから約20年前のタイムカプセルを掘り返しているようなものだから。相変わらず米国の顔をうかがってばかりの日本政府や、災害支援であんなに頑張っているのに不遇をかこっている自衛隊の皆さんのことを思うと、いつも「悔しさ」を書いてきた福井の本を早く読まねばと、焦る。
寝る前に読んでいて一旦閉じたが、夜中に目が覚めどうしても続きが読みたくなり、朝まで読んでしまった。こんな事はずいぶんなかった気がする。
事故を起こした自衛隊のヘリ操縦士の物語。彼を助け出した自衛隊員は「12」(トゥエルブ)という名のテロリスト。「12」の武器は自己増殖型コンピュータウイルス「アポートシスⅡ」と秘密兵器「ウルマ」。「12」は日米政府を秘密文書「BB」を盾に米海兵隊の沖縄からの撤収を実現したが、さらなる企みがあった。
後半から本格化した戦闘場面からは怒涛の展開で、息もつけない。米国の戦後対日活動の真意、国政のふがいなさ、自衛隊の中途半端な地位についての福井の強い主張に辟易しつつも、繰り返し畳みかけられる論理展開に共感し、洗脳されそうになっている自分に気付く。少人数によるテロ活動やら自衛隊シーホークと米攻撃ヘリアパッチの攻防など出来すぎの感もあるが、グングン引き込まれてしまって、読み終わった時には大きな息をついた。乱歩賞を受けた作品だという。この物語の前節ストーリーともなる「川の深さは」(03年 講談社文庫)では地下鉄テロ事件を題材にした元警官と少年の物語で、生きる意味を考えさせ、強い共感を憶える作品である。
「トゥエルブY.O.」の続編とも言える「亡国のイージス」(02年 講談社文庫)では手に取った上下で約500ページの厚さに恐れをなし、同名の映画(05年)が先になった。海上自衛隊のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦「いそかぜ」がテロリストに乗っ取られ日本政府を脅すというスジは既視感があったが、真田広之、中井貴一、寺尾聰、佐藤浩市ほかのこれ以上考えられない配役と、福井得意の防衛庁情報局「DAIS」、化学兵器「GUSOH」、爆薬「テルミット・プラス」で、エンターテインメント性の高いものとなった。
福井の代表作「終戦のローレライ」(05年 講談社文庫)も未読である。文庫本で4冊あるらしい。「川の深さは」「トゥエルブY.O.」と読んできてわかったことは、読むのにエネルギーがいること。福井の想いが込められている分、サラっと読み流すことはできないのだ。映画化された「ローレライ」(05年)も見逃している。役所広司が太平洋戦争末期の潜水艦の艦長役だという。
読みたい本、見たい映画がまた増えている。福井の作品は漫画も多く、若者からの評判も良かったようだ。良かったようだと過去形で書かざるを得ないのは福井の本を読み始めたのがこの半年だから約20年前のタイムカプセルを掘り返しているようなものだから。相変わらず米国の顔をうかがってばかりの日本政府や、災害支援であんなに頑張っているのに不遇をかこっている自衛隊の皆さんのことを思うと、いつも「悔しさ」を書いてきた福井の本を早く読まねばと、焦る。
2020年6月21日日曜日
ロバの耳通信「クリーピー 偽りの隣人」 「マーシュランド」
「クリーピー 偽りの隣人」(16年 邦画)
前川裕の小説「クリーピー」(12年 光文社)を原作としたホラー・ミステリー。元刑事の大学教授役を西島秀俊、その妻が竹内結子。隣人役の香川照之の演技がすごい、西島も気味悪さいっぱいだが、香川に怪しいひとをやらせると、本当は香川はもともと怪しいひとなんじゃないかと思うほどツボにはまる。この偏執的というのだろうか、こういう隣人がいたらおちおち暮らせないだろう。
スジはやや込み入っているから説明ももどかしいからやめるが、見ているだけで落ち着かず、不安の虜になってしまう。マインド操作されてしまう竹内結子も、ホラー大作「リング」(98年)、「残穢 -住んではいけない部屋」(16年)などの役柄に似ていて、適役かな。
封切り時はほとんど話題にもならなかったが、音楽もカメラワークも一流の「日本のホラー」。
「マーシュランド」(14年 スペイン)原題: La isla mínima
原題はスペインの湿地帯の地名だと。14年のスペインの映画賞を総ナメにしたとの前宣伝に期待して見始めたせいもあったためもだろうか、オープニングの地を這うような湿地帯の俯瞰映像に度肝を抜かれた。地を這うような音楽もこの映画がミステリーであることを示唆。オープニングのこの気持ちの盛り上りに、かって毎回ドキドキしながらビデオで楽しんだ「ツインピークス」(91年~ 米テレビドラマ、のち映画化)を思い出した。
時代設定がフランコ独裁の傷痕の残る80年。少女の連続失踪事件を追う二人の刑事が対峙する権威をかさに着た憲兵たち。湿地帯にはびこっている貧困、汚職、異常性愛、麻薬などにやりきれなくなった。
この映画が多くの賞をとったのはスペインの奥に蔓延った害毒のようなものを映画のなかで描き出した社会的なものなのだろうと想像。次から次へと悪夢のように繰り返し出てくる暗いシーンは救いがなく、いつの間にか息を止めて見ていて、犯人が誰だったかとか、スジがどうだったかとか、どうでも良くなった。自分のどういう深層心理がこの映画に同調あるいは拒否したのかわからないが、もういいやと。新型コロナに脅かされ続けたことやこのところずっと良くない体調のせいかもしれない。
前川裕の小説「クリーピー」(12年 光文社)を原作としたホラー・ミステリー。元刑事の大学教授役を西島秀俊、その妻が竹内結子。隣人役の香川照之の演技がすごい、西島も気味悪さいっぱいだが、香川に怪しいひとをやらせると、本当は香川はもともと怪しいひとなんじゃないかと思うほどツボにはまる。この偏執的というのだろうか、こういう隣人がいたらおちおち暮らせないだろう。
スジはやや込み入っているから説明ももどかしいからやめるが、見ているだけで落ち着かず、不安の虜になってしまう。マインド操作されてしまう竹内結子も、ホラー大作「リング」(98年)、「残穢 -住んではいけない部屋」(16年)などの役柄に似ていて、適役かな。
封切り時はほとんど話題にもならなかったが、音楽もカメラワークも一流の「日本のホラー」。
「マーシュランド」(14年 スペイン)原題: La isla mínima
原題はスペインの湿地帯の地名だと。14年のスペインの映画賞を総ナメにしたとの前宣伝に期待して見始めたせいもあったためもだろうか、オープニングの地を這うような湿地帯の俯瞰映像に度肝を抜かれた。地を這うような音楽もこの映画がミステリーであることを示唆。オープニングのこの気持ちの盛り上りに、かって毎回ドキドキしながらビデオで楽しんだ「ツインピークス」(91年~ 米テレビドラマ、のち映画化)を思い出した。
時代設定がフランコ独裁の傷痕の残る80年。少女の連続失踪事件を追う二人の刑事が対峙する権威をかさに着た憲兵たち。湿地帯にはびこっている貧困、汚職、異常性愛、麻薬などにやりきれなくなった。
この映画が多くの賞をとったのはスペインの奥に蔓延った害毒のようなものを映画のなかで描き出した社会的なものなのだろうと想像。次から次へと悪夢のように繰り返し出てくる暗いシーンは救いがなく、いつの間にか息を止めて見ていて、犯人が誰だったかとか、スジがどうだったかとか、どうでも良くなった。自分のどういう深層心理がこの映画に同調あるいは拒否したのかわからないが、もういいやと。新型コロナに脅かされ続けたことやこのところずっと良くない体調のせいかもしれない。
2020年6月18日木曜日
ロバの耳通信「ザ・ジェントルメン」
「ザ・ジェントルメン」(19年 米・英)原題:The Gentlemen
監督がガイ・リッチー、主演がマシュー・マコノヒーというだけで見る前から期待が高まる。さらにこの豪華な配役、コリン・ファレルだってワキ役。なんだなんだと血が躍る。この手の映画はカミさんも心からは付き合ってくれないし、やっとコロナ緊急警報がとけたばかりの映画館は最初から選択肢には入っていない。気に入ったところを何度も見ることができるネット動画をひとりで見るに限る。うん、期待を裏切らなかった”英国映画”。米・英合作とあるが、アメリカ人はどんな気持ちでこういう鼻もちならない(メッチャ楽しい)、スノッブ映画を見るのだろうか。
英国で外で食べる朝定食はどこでもだいたい同じ。ソーセージ、豆の煮もの、目玉焼き、トーストなどが大きめの皿に盛り合わせで出てくる。ソーセージがベーコンになったり、トーストがパンケーキだったり、焼きトマトが添えられていたりのマイナーチェンジはあるが、つまりはこれが英国風。ロンドン郊外に住む知り合いは、朝はトーストにバターを塗ったものを深皿に置き、小鍋で温めたハインツのポーク&ビーンズをドバっとかけて、ナイフとフォークで食う朝飯を何十年も食っていると聞くが、そこいらじゃフツーの朝食らしい。
映画の中では大層に和牛ステーキと高級スコッチが出てくるが、もちろんゼンゼン似合っていない。つまりはそんな英国たっぷりの映画。モゴモゴと口の中で発音する英語、ウイットといえば聞こえはいいが、皮肉たっぷりのセリフ、そしてキレのいい暴力。いい女が出ることは稀で、この映画もそう。気取って美女風に登場するミシェル・ドッカリーが一番いい役。だいたい好みじゃないけれど、”英国映画”だと思えば、許せる。
スジはなんのことはない、マリファナで富を築いたギャングが引退しようとマリファナのサプライチェーンを金持ちに売ろうとしたところ、買い手の金持ちの裏切りにあうーそんなクライム映画。悪いのがたくさん出てくるが、みんな英国紳士風なのがなんだかオカシイ。ジェームスボンド「007」シリーズ(53年~)、「キングスマン」シリーズ(14年~)、「コードネームU.N.C.L.E.」(15年)などと同じ味付け。面白い映画だよ、コレ。
監督がガイ・リッチー、主演がマシュー・マコノヒーというだけで見る前から期待が高まる。さらにこの豪華な配役、コリン・ファレルだってワキ役。なんだなんだと血が躍る。この手の映画はカミさんも心からは付き合ってくれないし、やっとコロナ緊急警報がとけたばかりの映画館は最初から選択肢には入っていない。気に入ったところを何度も見ることができるネット動画をひとりで見るに限る。うん、期待を裏切らなかった”英国映画”。米・英合作とあるが、アメリカ人はどんな気持ちでこういう鼻もちならない(メッチャ楽しい)、スノッブ映画を見るのだろうか。
英国で外で食べる朝定食はどこでもだいたい同じ。ソーセージ、豆の煮もの、目玉焼き、トーストなどが大きめの皿に盛り合わせで出てくる。ソーセージがベーコンになったり、トーストがパンケーキだったり、焼きトマトが添えられていたりのマイナーチェンジはあるが、つまりはこれが英国風。ロンドン郊外に住む知り合いは、朝はトーストにバターを塗ったものを深皿に置き、小鍋で温めたハインツのポーク&ビーンズをドバっとかけて、ナイフとフォークで食う朝飯を何十年も食っていると聞くが、そこいらじゃフツーの朝食らしい。
映画の中では大層に和牛ステーキと高級スコッチが出てくるが、もちろんゼンゼン似合っていない。つまりはそんな英国たっぷりの映画。モゴモゴと口の中で発音する英語、ウイットといえば聞こえはいいが、皮肉たっぷりのセリフ、そしてキレのいい暴力。いい女が出ることは稀で、この映画もそう。気取って美女風に登場するミシェル・ドッカリーが一番いい役。だいたい好みじゃないけれど、”英国映画”だと思えば、許せる。
スジはなんのことはない、マリファナで富を築いたギャングが引退しようとマリファナのサプライチェーンを金持ちに売ろうとしたところ、買い手の金持ちの裏切りにあうーそんなクライム映画。悪いのがたくさん出てくるが、みんな英国紳士風なのがなんだかオカシイ。ジェームスボンド「007」シリーズ(53年~)、「キングスマン」シリーズ(14年~)、「コードネームU.N.C.L.E.」(15年)などと同じ味付け。面白い映画だよ、コレ。
2020年6月12日金曜日
ロバの耳通信「ハウスメイド」「下女」
「ハウスメイド」(10年 韓国)
題名とポスターから、大金持ちの家に雇われた若いメイドが、その家の主人に手を出され、というか手を出させて妊娠し、主人の妻に追い出されるスジだろうと予想していたら、まさに想像通り。うーん、こういうのはよくある話なのかな、やっぱり。無理やり堕胎させられたメイドが大邸宅の居間で首つり、焼身自殺するというラストは予想はしていなかったものの、衝撃というほどもなく、ただのグロ感。
大邸宅やら食事やら、韓国の大金持ちって、こんなにすごいのかという驚きはあったが。まあ、ハウスメイド役の女優が美人じゃなうけど妙に色っぽかったからいいか。
イム・サンス監督が”現代韓国の階級問題を正面から描きたかった”と。まあ、キモチはわかったけれど、大金持ちと市井の人々の暮らしの違いなんてどこにもあるものだし、韓国だけが特別でもないだろうに。
「下女」(60年 韓国)
「ハウスメイド」は、「下女」のリメークだというからそっちも見たら、狂気というかとにかく恐ろしい映画だった。作曲家の夫は工場で女子工員相手のピアノの先生。妻は新居のために内職のミシンがけ。娘は身障者で息子はキカン坊。大金持ちの設定ではないから、下女を雇う理由が妻の出産。内職しつつと下女を雇う矛盾はあるが、この映画も「ハウスメイド」と一緒で、あちこちおかしなことだらけだからまあいいかと。下女に言い寄られた夫は下女を抱いた。妊娠した下女は妻の暴力で流産。下女は夫を恨み、夫の息子を殺害。さらに、ネコイラズで下女と夫は無理心中・・・まあ、よくこれだけの愛憎劇を思いついたものだ。モノクロの画面やオーバーな演技は、江戸川乱歩の古い日本映画を見てるよう。こっちの映画の主題は、女たちの愛憎に押しつぶされる男。映画としては「下女」のほうがずっといい出来なんだろう。
「下女」のポスター見ていたら、「ハウスメイド」と同じ韓国語の表題文字。そうなのか、どっちも原題は「下女」だったのか。うん、どっちの女たちも怖いが、世の中怖くない女なんてどこにもいない。
題名とポスターから、大金持ちの家に雇われた若いメイドが、その家の主人に手を出され、というか手を出させて妊娠し、主人の妻に追い出されるスジだろうと予想していたら、まさに想像通り。うーん、こういうのはよくある話なのかな、やっぱり。無理やり堕胎させられたメイドが大邸宅の居間で首つり、焼身自殺するというラストは予想はしていなかったものの、衝撃というほどもなく、ただのグロ感。
大邸宅やら食事やら、韓国の大金持ちって、こんなにすごいのかという驚きはあったが。まあ、ハウスメイド役の女優が美人じゃなうけど妙に色っぽかったからいいか。
イム・サンス監督が”現代韓国の階級問題を正面から描きたかった”と。まあ、キモチはわかったけれど、大金持ちと市井の人々の暮らしの違いなんてどこにもあるものだし、韓国だけが特別でもないだろうに。
「下女」(60年 韓国)
「ハウスメイド」は、「下女」のリメークだというからそっちも見たら、狂気というかとにかく恐ろしい映画だった。作曲家の夫は工場で女子工員相手のピアノの先生。妻は新居のために内職のミシンがけ。娘は身障者で息子はキカン坊。大金持ちの設定ではないから、下女を雇う理由が妻の出産。内職しつつと下女を雇う矛盾はあるが、この映画も「ハウスメイド」と一緒で、あちこちおかしなことだらけだからまあいいかと。下女に言い寄られた夫は下女を抱いた。妊娠した下女は妻の暴力で流産。下女は夫を恨み、夫の息子を殺害。さらに、ネコイラズで下女と夫は無理心中・・・まあ、よくこれだけの愛憎劇を思いついたものだ。モノクロの画面やオーバーな演技は、江戸川乱歩の古い日本映画を見てるよう。こっちの映画の主題は、女たちの愛憎に押しつぶされる男。映画としては「下女」のほうがずっといい出来なんだろう。
「下女」のポスター見ていたら、「ハウスメイド」と同じ韓国語の表題文字。そうなのか、どっちも原題は「下女」だったのか。うん、どっちの女たちも怖いが、世の中怖くない女なんてどこにもいない。
2020年6月6日土曜日
ロバの耳通信「ジャージー・ボーイズ」「スニーカーズ」
「ジャージー・ボーイズ」(14年 米)原題:Jersey Boys
浸りたい時にはミュージカルと決めている。元気を出したい時、泣きたい時、気持ちよくなりたい時、スカッとしたい時とか。最近は映画館に行くことも殆どなくなって、もっぱらノートPCか寝る前のスマホの中のネット動画のお世話になってる。ネット動画の良いところはほぼタダなこと、トイレや寝落ちで中断したら少し巻き戻して都合の良い時に、切れ目なく見ることができること。大画面じゃなけりゃとか思うこともあるが、インフルやらコロナやら命を犠牲にするほどの事じゃない。
とにかく、浸りたいときはミュージカル、ということで今回はこの映画「ジャージー・ボーイズ」。60年代に流行った米ロックグループ「フォー・シーズンズ」の伝記映画で、監督がクリント・イーストウッド。原作は同名のブロードウェイミュージカルだというが、もはやブロードウェイの舞台を見ることなどおよびもつかなくなったのは残念。帝劇で日本版のミュージカルもやったようだけれど、60年代のヒット曲を日本の歌手で聞いてもなんだかこそばゆく思うだけだと思うから行く気も起きなかった。ブロードウェイミュージカルを日本人がやってもつまらないこに身をもって懲りたことが何度もあるからね。その意味では、ワタシは間違いなく<洋物カブレ>。
出だしの「シェリー」や、山場での「君の瞳に恋してる」やら、「懐かしのメロディー」にたっぷり浸ることができた。良かったよ。
「スニーカーズ」(92年 米)原題: Sneakers
コンピューターハッキングを題材にしたクライム映画。ロバート・レッドフォードの主演ということから、古~いアクションを予想し、見始めたらコレが目を離せないほど面白かった。こういうときの気持って、海岸を散歩していたら思いかけず砂の中から金貨、はオオゲサだがなんだかすごく得した感じ。古い映画を動画サイトで漁る楽しみってあるね。
画像こそ古いものの、ハッキングとか、迂回通信とか今から考えたら約30年も前とは思えない技術が明かされていて楽しかった。また、シドニー・ポアチエとかダン・エイクロイド、リバー・フェニックスとか個性あふれる役者を配したグループを組んでワルの巣窟に侵入するなんてのは、「七人の侍」(54年 邦画)や「スパイ大作戦」(66年~ 米テレビシリーズ)のパクリだが、映画全盛期の時代だからこんな豪華な配役もできたのだろう。
ロバート・レッドフォードの恋人役で出ていた当時30代後半のメアリー・マクドネルがなんとも色っぽくて良かった。今の若すぎる女優とはゼンゼン違うタイプの”アメリカの明るいオバサン”の感がメッチャ好き。
浸りたい時にはミュージカルと決めている。元気を出したい時、泣きたい時、気持ちよくなりたい時、スカッとしたい時とか。最近は映画館に行くことも殆どなくなって、もっぱらノートPCか寝る前のスマホの中のネット動画のお世話になってる。ネット動画の良いところはほぼタダなこと、トイレや寝落ちで中断したら少し巻き戻して都合の良い時に、切れ目なく見ることができること。大画面じゃなけりゃとか思うこともあるが、インフルやらコロナやら命を犠牲にするほどの事じゃない。
とにかく、浸りたいときはミュージカル、ということで今回はこの映画「ジャージー・ボーイズ」。60年代に流行った米ロックグループ「フォー・シーズンズ」の伝記映画で、監督がクリント・イーストウッド。原作は同名のブロードウェイミュージカルだというが、もはやブロードウェイの舞台を見ることなどおよびもつかなくなったのは残念。帝劇で日本版のミュージカルもやったようだけれど、60年代のヒット曲を日本の歌手で聞いてもなんだかこそばゆく思うだけだと思うから行く気も起きなかった。ブロードウェイミュージカルを日本人がやってもつまらないこに身をもって懲りたことが何度もあるからね。その意味では、ワタシは間違いなく<洋物カブレ>。
出だしの「シェリー」や、山場での「君の瞳に恋してる」やら、「懐かしのメロディー」にたっぷり浸ることができた。良かったよ。
「スニーカーズ」(92年 米)原題: Sneakers
コンピューターハッキングを題材にしたクライム映画。ロバート・レッドフォードの主演ということから、古~いアクションを予想し、見始めたらコレが目を離せないほど面白かった。こういうときの気持って、海岸を散歩していたら思いかけず砂の中から金貨、はオオゲサだがなんだかすごく得した感じ。古い映画を動画サイトで漁る楽しみってあるね。
画像こそ古いものの、ハッキングとか、迂回通信とか今から考えたら約30年も前とは思えない技術が明かされていて楽しかった。また、シドニー・ポアチエとかダン・エイクロイド、リバー・フェニックスとか個性あふれる役者を配したグループを組んでワルの巣窟に侵入するなんてのは、「七人の侍」(54年 邦画)や「スパイ大作戦」(66年~ 米テレビシリーズ)のパクリだが、映画全盛期の時代だからこんな豪華な配役もできたのだろう。
ロバート・レッドフォードの恋人役で出ていた当時30代後半のメアリー・マクドネルがなんとも色っぽくて良かった。今の若すぎる女優とはゼンゼン違うタイプの”アメリカの明るいオバサン”の感がメッチャ好き。
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