2020年6月28日日曜日

ロバの耳通信「AI崩壊」「蜘蛛の巣を払う女」

「AI崩壊」(20年 邦画)

キャッチコピーは「その日、AIが命の選別を始めた」。近未来の日本が舞台。破綻した日本経済を立て直すために、高年齢者や病人などの社会的弱者を抹殺し、社会の”軽量化”を目指す選別プログラムを動かし始めたAIの暴走を止めるため活躍するAI開発者の主人公を描いたパニックサスペンス映画。
病気の診断や治療を目的に開発されたプログラムを、個人の情報入手や統制に使おうとした政治家や警察官僚をワルモノにして将来のAIの進め方に警鐘を鳴らそうとしたところは評価できるが、AI開発のありかたに曖昧なままの個人情報の危機感に結び付けようとしたコジツケに戸惑ってしまった。
主演に大沢たかお、ワキに賀来賢人、広瀬アリス、岩田剛典、松嶋菜々子、三浦友和ほか、ヤングアイドルからシニアまでそろえた邦画得意の仲良しクラブ配役がやや鼻についたが、巨大サーバー部屋やハッキングのそれらしいディテールなど、ワーナー・ブラザーズ配給でも恥ずかしくないくらいの出来。スタートの海岸の暗いシーン、ラストの墓参りシーンなど思い切ってカットし短くしたらもっとキレの良い作品になったかな。

「蜘蛛の巣を払う女」(18年 米・スウェーデン)原題:The Girl in the Spider's Web

おかしな邦題だと思うが、まあいいか。「ミレニアム」シリーズ3部作「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」の続編にあたり、このあと「復讐の炎を吐く女」、「死すべき女」と原作は続くらしい。
3部作のほうは、スウェーデン版、ハリウッド版ともに見ていて、いままでのハリウッド映画とは異なるツクリの映像に衝撃を感じ、今回の「蜘蛛の巣を払う女」もスピード感や疎外感(うまく表せないが、そういう気持ち)が斬新で良かった。今までのシリーズ作品と共通しているのはスウェーデンの冷たい空気と無機質な都市の風景、今回突出していたのが効果音の硬さと音楽(ロケ・バニョス)。

主人公の天才女ハッカーのリスベット・サランデルが、スマホとパソコンでSpider's Webに入り込み、不幸な女を助け男たちに復讐してゆく痛快さが快感。映画批評サイトRotten Tomatoesでは評価が低かったが、この数カ月で見た映画ではワタシ的にはベストに近かったのは、ストーリーの残酷さや展開の意外さが好みにピタリ合ってたせいか。さらに主人公役の英女優クレア・フォイが美人とは言えないものの、ワタシの好みの短髪ビンビンでオートバイで颯爽と走る突っ張りスウェーデン女風だったことか。
とにかく、夜中にスマホで見始めてすっかり夜更かししてしまったから、今度はPCの大きな画面とステレオヘッドフォンで、もう一回初めから見よう。

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