2020年6月21日日曜日

ロバの耳通信「クリーピー 偽りの隣人」 「マーシュランド」

「クリーピー 偽りの隣人」(16年 邦画)

前川裕の小説「クリーピー」(12年 光文社)を原作としたホラー・ミステリー。元刑事の大学教授役を西島秀俊、その妻が竹内結子。隣人役の香川照之の演技がすごい、西島も気味悪さいっぱいだが、香川に怪しいひとをやらせると、本当は香川はもともと怪しいひとなんじゃないかと思うほどツボにはまる。この偏執的というのだろうか、こういう隣人がいたらおちおち暮らせないだろう。
スジはやや込み入っているから説明ももどかしいからやめるが、見ているだけで落ち着かず、不安の虜になってしまう。マインド操作されてしまう竹内結子も、ホラー大作「リング」(98年)、「残穢 -住んではいけない部屋」(16年)などの役柄に似ていて、適役かな。

封切り時はほとんど話題にもならなかったが、音楽もカメラワークも一流の「日本のホラー」。

「マーシュランド」(14年 スペイン)原題: La isla mínima

原題はスペインの湿地帯の地名だと。14年のスペインの映画賞を総ナメにしたとの前宣伝に期待して見始めたせいもあったためもだろうか、オープニングの地を這うような湿地帯の俯瞰映像に度肝を抜かれた。地を這うような音楽もこの映画がミステリーであることを示唆。オープニングのこの気持ちの盛り上りに、かって毎回ドキドキしながらビデオで楽しんだ「ツインピークス」(91年~ 米テレビドラマ、のち映画化)を思い出した。
時代設定がフランコ独裁の傷痕の残る80年。少女の連続失踪事件を追う二人の刑事が対峙する権威をかさに着た憲兵たち。湿地帯にはびこっている貧困、汚職、異常性愛、麻薬などにやりきれなくなった。
この映画が多くの賞をとったのはスペインの奥に蔓延った害毒のようなものを映画のなかで描き出した社会的なものなのだろうと想像。次から次へと悪夢のように繰り返し出てくる暗いシーンは救いがなく、いつの間にか息を止めて見ていて、犯人が誰だったかとか、スジがどうだったかとか、どうでも良くなった。自分のどういう深層心理がこの映画に同調あるいは拒否したのかわからないが、もういいやと。新型コロナに脅かされ続けたことやこのところずっと良くない体調のせいかもしれない。

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