2020年7月3日金曜日

ロバの耳通信 旅の3冊「旅の窓」「ある日、カルカッタ」「アイスランド」

勤務先までの約2時間の毎日は「旅」だった。

「旅の窓」(15年 沢木耕太郎 幻冬舎文庫)

「旅の窓」は、雑誌の連載を見開きの左に写真、右にエッセイにして本にしたもので、81枚の写真がいい。エッセイは年を重ねた沢木らしい軽妙な語りもあるが、孤独な旅を愛した者の気持ちがジワジワ伝わってきた。

沢木を初めて読んだのは「深夜特急」(86年~ 沢木耕太郎 新潮社)だった。色焼けしたハードカバーの本を古本屋で見つけて立ち読みし、出だしの文章にに引き込まれたワタシは揃いの3巻を紙袋に入れてもらい、家に持ち帰ろうとして我慢できず駅までの途中にあったドトールに腰を据え第1巻(第1便)を読んだ。家に帰って次の第2巻を読もうと思っていたのだがソコは貧乏人根性。3巻とも読んでしまうのが惜しくて、また第1巻から読んだ。「深夜特急」は文庫本(6冊)にもなったから、ある時期ずっと1-2冊はいつも通勤カバンの中に入っていて、時々牛の反芻みたいに繰り返し読んだ。そのあと、「人の砂漠」(77年)、「一瞬の夏」(81年)、「檀」(95年)、「無名」(03年)などを読んできて、図書館で全8巻の「沢木耕太郎ノンフィクション」(02年~ 文藝春秋社)を見つけてしばらくはそれにハマった。

「ある日、カルカッタ」(01年 俵万智 新潮社)

万智ちゃんがずっと若い頃にかいた「サラダ記念日」(89年 河出文庫)の感性も、妊娠から出産の気持ちを文字にした「生まれてバンザイ」(10年 童話屋)の優しさもない、万智ちゃんの中途半端な時代の本。だから、思いっきりつまらない。初めてのインド旅行について何を書いて、どんな歌にしたのか期待して本を開いたのに、映画人や出版社の方、総勢6名の団体旅行で行ったカルカッタとガンジスのペラッペラの死生観とか書いてくれてもね。”マリア・テレサと会いました”の記念写真とかね、なんだよソレ。何ページおきかに出てくる歌もね、ゼンゼン心こもってなくて、万智ちゃんじゃないよね。

「アイスランド」(15年 椎名誠 ナショナル・ジオグラフィック)

椎名の旅行記って、面白い。いつもの沢野(ひとし)の楽しい挿絵はないけれどナショナル・ジオグラフィックのスゴイ写真があって、それに負けないくらいの椎名の旅を愛する文章があったね、いつもの。椎名の旅の本読んで、いつも思うことだけれども、アイスランドに行きたくなった。多分、とかじゃなく、もうゼッタイ行く機会なんて来ない。いや、旅行なんてイキオイで行かないとどこにも行けないし、パスポートも切れちゃったから行けないけどね。
椎名と言えば、ほんのこの間、若い頃のことをまとめた「本の雑誌 血風録」(05年 椎名誠 新潮文庫。600ページ近くあるけれど、コレは椎名のセイシュン(でもないか)半生記だから、椎名好きなヒトにもっと好きになってもらうために是非勧めたい)を読んで、とっても苦労したヒトだということがわかった。だから、旅日記とかにヒトガラとかが滲み出るのだろうかね。「アイスランド」のことを書いたつもりが、「本の雑誌 血風録」の推薦文になったみたいだけど、まあ、いいよね。あ、この本の表紙がいいんだよね。

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