「ホテルのプレミアチケットが当たった」
駅の近くに大きなホテルができたと。コンコースから地下通路を通って行けるくらい近くだというし、昔何度か泊まったことのある大手系列のホテルだというから服装もちょっといいものを着て行ってみた。
ロビーを右手にみて、うす茶色のカーペットの長い毛足を革靴で感じながら進むと左手が明るいガラス窓になっているカフェ。入口に案内人もいなかったので奥のソファーに腰掛けると、白い上っ張りを着たウエイターが風のように近づいてきた。なにをオーダーしたかも全く記憶にないが、しばらくそこで過ごしてキャッシャーに向かった。
2630円という中途半端な金額。コーヒーだけにしては高いし、何かを食べたにしては全然少ない金額。とにかくそこでお金を払って出ようとしたら、キャッシャーに声をかけられた。
振り向くと、蝶タイをした人の好さそうな中年のオジサンがワタシを見ながら小さな紙を振っている。戻ってみるとレシートだと。気取って、いらないと言うと、オジサンがレシートの一部を指さして、興奮して何かを言っている。昔のレシートのように、ミシン目から切り離されたドット打ちのレシート。オジサンが指さすレシートの”当たり”の小さな文字。ふーん、そうかホテルのオープン記念のクッキーでもくれるのかと聞いたら、このホテルの特別ゲストになれるハズだという。オジサンも話には聞いていたが、初めてとのことで館内電話でどこかに聞いている様子。
オジサンが教えてくれたところによると、この当たりマークは系列ホテルグループでも数年に一度出るかどうかというプラチナチケットの当選のマークだと。さらに、聞いてみると無料でスイートに何日か泊まれて、飲み食い放題できると、しかも友人とかも一緒で。念のため再確認したけれど、間違いなく全部タダ。
と、言われても、こういうことに付き合ってくれそうな友人もいないしと思い、オジサンに付き合ってくれるかと聞いたら、オジサン小躍り。こちらも調子に乗って、オジサンの知ってる人できれいなコがいないかと聞いたら、ニコニコ顔でまかせてくださいと。で、結局、オジサンとオジサンのツレ、オジサンが紹介してくれる女のコでお泊りすることに。
悪乗りしてオジサンに頼んだのは、日焼けしたナイスバディの陽気なコ。自分のなかのイメージだと、藤原紀香+昔、資生堂のポスターで見た前田美波里+カネボウの夏目雅子のイメージ。オジサンは任せてください顔。こちらも小躍り。
女のコの日焼けした肢体を想像し、ドキドキ感が高まったところで目が覚めた。
「閉鎖病棟-それぞれの朝-」(19年 邦画)
原作は山本周五郎賞を受けた帚木蓬生(ははきぎほうせい)の同名の小説(97年 新潮文庫)。精神病院内のさまざまな人たちを丁寧に描いている。
元死刑囚“わしは世間に出たらあかん人間や”の秀丸を笑福亭鶴瓶が好演。家庭内DVから“私の居場所はここしかない”とこの病院に逃げ込んだ女子高生由紀役に小松菜奈、幻聴に悩まされる元会社員チュウさんは “事情をかかえてない人間なんていないから”と女子高生を慰める。
映画としては地味な作品だと思うが、脚本(平山秀幸、監督も)がいい。セリフやシーンより前に出てこない音楽もいい。ラストも思わず泣けた。
同じ原作で「いのちの海」(01年 邦画)もあるらしいが、キャスティングをチェックして探すのをやめた。
カミさんに、滲みる良い映画だったよと話したら、「原作が読みたいでしょう」と返された。うん、読みたい本がまた増えた。
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