2020年11月25日水曜日

ロバの耳通信「ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム」「ポゼッション」

「ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム」(20年 米)原題:The Last Days of American Crime

いままでほとんどハズレのなかったNETFLIXオリジナルでは珍しい「ハズレ」。原作はアメリカのオトナ向け漫画単行本であるグラフィックノベルだと。

近未来、犯罪の増加に手を焼いたアメリカは脳をコントロールできるシグナルを出することで犯罪防止しようとしていた。つまりは、悪いことをしようとすると頭が痛くなって、身動きがとれなくなるシグナルらしい。なんともとんでもない設定だが、そのシグナルの施行前に紙幣の印刷工場から大金を盗み、シグナルの届かないカナダに逃げようとするギャングたちを主人公にしたクライムアクション映画。

NETFLIXオリジナルらしく、出演料の高いメジャーな俳優は出てこない。ただ、原作の版権までケチるとこうなるーの見本のような失敗作。ハデなドンパチやカーアクションだけでは、レベルアップした聴視者は見なくなるよ。もっとストーリー、演出や脚本も大事にしようよ。オリジナルにこだわりすぎて聴視者にソッポを向かれた、HBOと同じ運命をたどるよ。

「ポゼッション」(12年 米)原題:The Possession

原題は悪魔の憑依みたいな意味らしい。娘がガレージセールで買った木箱には悪魔が取りついていたというホラー。製作がカルト映画の帝王「あの」サム・ライミ、主演がジェフリー・ディーン・モーガン(「ウォーキング・デッド」シリーズ(17年~米テレビドラマ)で極悪ニーガンを好演)ということで期待。ホラー映画らしく、突然の大きな効果音とか、たくさんの蛾やら散々脅かしてくれたが邦画のように、なぜこうなったかの背景がないから、ただのお化け屋敷と同じ。まあ、楽しめたけどね。新しい印象ホラー映画の楽しみは終盤に出てくる悪魔だが、そう汚くも怖くもなかったかな。悪魔再臨の「続編」期待のラストシーンだったけど、まだ出てないところを見ると、たいして評判良くなかったのかな。

wikiによると同名のホラー映画(81年 仏・西独)があって、今年HDリマスター版が今年上映されたらしい。40年経ったものがまた上映されたんだから、それなりの映画かな。こっちも見たい。

2020年11月20日金曜日

ロバの耳通信「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」「上と外」

「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」(19年 文芸春秋社 大島真寿美)

副題を「いのせやまおんなていきん たまむすび」ーと読めば、歌舞伎か浄瑠璃ものかと想像もつく。浄瑠璃作家の近松半二の生涯を描いた作品で、浄瑠璃について全く知見がなかったにもかかわらず、この作品に触発され、YouTubeで浄瑠璃代表作の曽根崎心中を見た。人形の表情が良くて、なんだかこの世界にハマってしまいそうな予感。

全編、大阪弁というのだろうか浪速の言葉での江戸時代の物語だから、タイムスリップし異界に身を置いた感。「半二」が著者大島自らが創作した浄瑠璃の物語の登場人物「三輪」と心を通わせるところに感動した。大島が「半二」を恋しいと思い、「半二」が自分が書いた浄瑠璃本の中の「三輪」を恋しがっている。うん、よくわかる。

ああ、ワタシも小説の中の架空の女の子「青豆」を本気で好きになったことがあったなと思い出した(「1Q84」(09年 村上春樹 新潮社))。誰かを好きになるなんて、結局は自分勝手な妄想の果てのようなものだから、キレイだろうとナマイキだろうと、架空のヒトでもいいのかも。とはいえ、こう書いていて「青豆」に会いたくなってきたから、また「1Q84」を読んでみよう。人恋しくて、誰かに会いたい。

「上と外」(03年 恩田陸 幻冬舎)

崩壊寸前の家族で行った南米でヘリコプターから落ちた兄妹がジャングルでサバイバル。マヤのピラミッドをめぐる青春アドベンチャー。インディー・ジョーンズの世界、恩田陸得意の異次元空間を楽しんだ。

ハードカバー500ページもなんのそので面白かったけど、ラストはもうちょっとなんかあっても良かったんじゃないと思うあっけなさ。まあ、難しいことナシで楽しく読もう。キャスティングが難しいところだけど、映画化されたらいいね。

2020年11月15日日曜日

ロバの耳通信「ジェミニマン」「ハウ・トゥ・エスケイプ?」

「ジェミニマン」(19年 米)原題 Gemini Man

国防省お抱えの伝説のスナイパーが引退を告げたとき、自分のクローンに狙われるハメに。アクション映画は大好き。主演のウィル・スミスは好きだし、共演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドはメッチャ好みだし、配役も豪華。ブダペストのロケも素晴らしいし、製作費の約2億ドルも近年なかなかないお金のかけ方なのに・・面白くなかった。原作が面白くないのか、脚本が悪いのか、この手の作品でよく感じる、「また、見たい感」がゼロ

wikiによれば、本国での公開後まだ2カ月強しかたっていないものの、スゴイ赤字だと。確かに、予告編も冴えない。スゴイ広告宣伝費をかけたとあったけれども、要は見たヒトが少ないってことでしょ。
コロナやインフルが流行っている寒い時期に映画館に行くには、結構強い理由が要るよね。例えば、ネットや映画雑誌などでの前評判がすごくいいとか、よく知っているヒトのお勧めとか、好きな監督やお気に入りの俳優が出てるとか、いいシーンの繰り返しテレビCMとか。でなければ、寒い中、入場料や交通費かけて行こうって気にはならないよね。ワタシの個人的な好みは別にしても「ジェミニマン」って、なんで売れていないのだろうね。

「ハウ・トゥ・エスケイプ?」(12年 米)原題:Detour

土砂崩れで埋まってしまった車に閉じ込められた男がどうやって脱出するか。うーん、工夫を凝らし結局脱出に成功するのだが、いつまでもバッテリー切れにならない懐中電灯を持っていたり、道具もいろいろ持ってたり、なんだか出来過ぎていてつまらない。
なんでこの手の映画、ハッピーエンドで終わるんだヨ。ひとつぐらい、どうあがいても、出られずに飢えや渇きのため絶望に泣かせてフェードアウトとか、そういう映画にしてくれないかな。

この映画をパクったような韓国映画(「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」(16年))もあった。有名スターのハン・ジョンウのおかげか韓国では大ヒットとのことだったけれど、ワタシにはこっちもつまらなかった。

2020年11月9日月曜日

ロバの耳通信「トゥモロー・ワールド」「エージェント・マロリー」

「トゥモロー・ワールド」(06年 英・米)原題: Children of Men

人類が生殖能力を失くした近未来の英国。最後の妊婦を守るために命を懸けた男の戦い。
キャッチコピーは”子供が産まれなくなった未来”

原作<「人類の子供たち」(99年 P・D・ジェイムズ ハヤカワ・ミステリ文庫)>に比べ、映画がずっといい。監督・脚本(アルフォンソ・キュアロン)、配役(クライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケインほか)、撮影(監督と同じメキシコ出身のエマニュエル・ルベツキによる超長回し)、音楽(インド出身の作曲家ジョン・タヴナー)などこれ以上ない組み合わせ。挿入楽曲「広島の犠牲者に捧げる哀歌」(クシシュトフ・ペンデレツキ)ほか「交響曲第10番」(ショスタコーヴィチ)ほかの名曲が違和感なしに使われていて、エンドロールの暗い画面と子供たちの声がより印象を強くした。

暴力に満ちた暗い映画だが、わかっているのは最高の映画だということ。つまらない映画のために費やしてきた時間を思い、何度目かのこの映画を折角の雨の日に。
人間にとって最も必要な”希望”をこれくらい温かく描いた作品をほかに知らない。

「エージェント・マロリー」(12年 米)原題:Haywire

原題の意味はよくわからない。ワラを束ねる針金。俗語もあるらしいが、とにかく意味不明。
大好きなスパイ・アクション映画ということと監督(スティーブン・ソダーバーグ)と配役(ユアン・マクレガー、マイケル・ファスベンダーほかメジャー俳優ゾロゾロ)が気に入って見た作品だったが、主役の総合格闘家ジーナ・カラーノの見せ場ばかり。ムエタイ出身だというマッチョボディなのだが、顔も仕草もゼンゼン好みじゃない。
たくさんのメジャー俳優の見せ場を作るために書かれたと思われる脚本にゲンナリ。アクション映画もストーリーがいい加減だと楽しめない。原作なんてないんじゃないかな。うーん、予告を見てからにすべきだった。

2020年11月5日木曜日

ロバの耳通信「武蔵」「五郎治殿御始末」

「武蔵」(11年 花村萬月 徳間書店)

宮本武蔵の本、映画どれも面白く夢中になったがこの花村萬月版も然りだ。花村萬月の色は女性への憧憬ではないだろうか。マザコンと言い換えてもいい。母親なら自身の身を犠牲にしてでもどんなことでも受け入れてくれる、そんな甘えをすべての女性に求めるのが花村萬月ワールド。求めても手に入れることができず、苦しみ身もだえする。

若き武蔵は性欲を持て余し、出会う女性すべてに発情する。いままで読んだ武蔵は強さを極めるためにありえないくらいのストイックさを持っていたように感じたが、花村が描いた武蔵は凡人の青春のように奔放で、切実だった。

新しい武蔵像の痛快さが楽しい。


「五郎治殿御始末」(09年 浅田次郎 新潮文庫)

浅田次郎の小説に接して不思議に思うことはこの話が実話を基にしたか、浅田の創作なのか。長い歴史のなかでこんなことがあっても不思議ではないと思うが、とにかくまいった。

幕末から維新への流れのなかで、あとに続くものたちに自らの死に様を見せた老武士の物語ーひとことで言えばそれだけの話しの小編だが、噛みしめながら何度も読みたい、読まなければならない気持ちにさせられるのはこういう生き方に憧れながらも、敵うことのない哀しみを感じるからなのか。


本や映画についてのブログをただ自分のためだけに書いている。あともどりもやり直しも効かず、もはや書き記すくらいしかできない。 

2020年11月2日月曜日

ロバの耳通信「新・第一容疑者」「刑事ヴァランダー」・・ドラマにはまる日々

 コロナ禍のせい・・とばかりも言えないが、外出の機会が減り動画サイトに貼り付くようになりAmazon PrimeやGyaoをお友達にしてしまった。天気でもよければカミさんに連れられて気晴らしの散歩に行くのだが、雨でも降ろうものならどうしようもない。

テレビも動画サイトの世界びっくりニュースみたいなものばっかり。第何波の感染拡大とかでヨーロッパの感染も広がっているようだし、オリンピックはゼッタイやりますと言っている誰かの言葉もむなしい。Go-Toなんとかもゼンゼン食指が出ない。うーん、ストレス溜まるなー・・

「新・第一容疑者」(11年~ 米テレビドラマ)原題:Prime Suspect

超ロングラン大ヒットの同名の英テレビシリーズ(91年~06年)のリメイクアメリカ版だというからオリジナル版<ヘレン・ミレン主演のイギリス刑事ドラマ>はさぞ面白いに違いないと探しているがまだ出会えずにいる。

うん、主演のマリア・ベロ(「ハムナプトラ3」(08年 米))が頑張っているリメイク版も充分面白いけれど、不倫、小児虐待、非行など社会問題を扱っている割には、作りがちょっと粗い気がする。



「刑事ヴァランダー」(08年~ スウェーデン・英テレビドラマ)原題:Wallander


スウェーデンの警察小説が原作。英名優ケネス・ブラナー(「ハムレット」(96年 英)ほか)が、妻に逃げられ自らも慢性疲労、糖尿病に悩む部長刑事役を演じていて、ヨレヨレになりながらも人種問題など行き場のない社会問題を背景にした犯罪者たちに対峙してゆく姿が共感を呼ぶ。舞台がスウェーデンの田舎町ということで寒さや暗さまで伝わってくる。
このドラマは気が滅入る。犯罪者たちも、被害者たちも、刑事たちもみんな幸せな顔をしていない。シリーズ2までで、見ている方の心が折れ続けられなくなった。悲しすぎると泣けないことにも気が付いた。

人がクライムノベル作品に惹かれるはなぜだろうか。


「いとしのソヨン」(12年~ 韓テレビドラマ)原題:내 딸 서영이 

カミさんがハマって50話もあるのに2度見とかしてるし、ゼッタイおもしろいと言うから見始めたが3話目で挫折。あこがれのチェ・ジウ主演の大ヒット「冬のソナタ」(02年~)も結局挫折。韓国映画、結構好きなのにと考えてみたら、好きなのはクライムノベル系ばかり。「ソヨン」も「冬ソナ」もクライムじゃないよな。ソッチ系で探してみよう。

「スモーク 救命消防署」(14年~ 英テレビドラマ)原題:The Smoke

消火作業で大やけどを負った消防隊分隊長がトラウマと戦う。毎回火災シーンの迫力がすごいのと、消防隊のメンバーとの駆け引きの会話が楽しく、つい見てしまっている。なにもしないよりいいかと英語の字幕版で英語の勉強をしている気分、すこし自己満足。