「武蔵」(11年 花村萬月 徳間書店)
宮本武蔵の本、映画どれも面白く夢中になったがこの花村萬月版も然りだ。花村萬月の色は女性への憧憬ではないだろうか。マザコンと言い換えてもいい。母親なら自身の身を犠牲にしてでもどんなことでも受け入れてくれる、そんな甘えをすべての女性に求めるのが花村萬月ワールド。求めても手に入れることができず、苦しみ身もだえする。若き武蔵は性欲を持て余し、出会う女性すべてに発情する。いままで読んだ武蔵は強さを極めるためにありえないくらいのストイックさを持っていたように感じたが、花村が描いた武蔵は凡人の青春のように奔放で、切実だった。
新しい武蔵像の痛快さが楽しい。
「五郎治殿御始末」(09年 浅田次郎 新潮文庫)
浅田次郎の小説に接して不思議に思うことはこの話が実話を基にしたか、浅田の創作なのか。長い歴史のなかでこんなことがあっても不思議ではないと思うが、とにかくまいった。幕末から維新への流れのなかで、あとに続くものたちに自らの死に様を見せた老武士の物語ーひとことで言えばそれだけの話しの小編だが、噛みしめながら何度も読みたい、読まなければならない気持ちにさせられるのはこういう生き方に憧れながらも、敵うことのない哀しみを感じるからなのか。
本や映画についてのブログをただ自分のためだけに書いている。あともどりもやり直しも効かず、もはや書き記すくらいしかできない。
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