初めての作家を読むときにアテにしたいのが、その著者が売れたか(新刊を手に入れることは稀だから、売れているかーというのは選択肢にはない)、賞を獲ったかーになる。好みから特にアテにしたいのが、「このミステリーがすごい!賞」か。限られた時間や体力のせいで、片っ端から読む元気ももはやないし、(ワタシにとって、期待外れの)失敗だらけの本も御免だ。

「波切り草」(09年 椎名誠 文春文庫)

幼い頃に母を亡くし、継母のいる家は居心地のいいものではなかったが、一旦外に出てしまえば、無限に優しい祖母や、叔父や叔母、それにもう名前も忘れてしまったが一緒に遊んだ友達がいた。長屋を出ればすぐ畑や水田があり、自転車に乗ればどこまでも行けそうな気がした。今思い出しても悲しいことや悔しいことも多かったが、存外恵まれていたのだろうと、今なら思える。
「新宿遊牧民」(12年 椎名誠 講談社文庫)

椎名が出合った人たちのことを書いた”実話”だと。すばらしい仲間たちを羨ましいと思うが、自分の魅力のなさを十分認識しているから、椎名がただただ羨ましいだけ。
椎名のとっておきというか、真骨頂はやはり旅物語だ。モンゴル旅行記やら、島めぐりやら。お金はともかく、体力と食欲がまるでなくなってるから椎名の旅物語はすべて憧れの夢物語に。