2021年5月18日火曜日

ロバの耳通信「ノマドランド」

 「ノマドランド」(21年 米)原題: Nomadland

近年これほど話題になり、アカデミー賞ほか世界の映画賞を総ナメにした映画を知らない。どの批評サイトや口コミをチェックしても監督や製作スタッフ、配役をベタ褒めだから期待は自分の中であがりっぱなし。3月に日本公開ということだが、コロナ真っただ中の映画館も行く気もなし。

YouTubeの予告編は意外に地味、ストーリーは連れ合いを亡くしたオバサン(というか、老境にさしかかったおばーさん)が社宅も追い出され、なけなしの家財を積んだRV車に乗って放浪の旅に出かけるというもの。

原作がノンフィクション「ノマド: 漂流する高齢労働者たち」(ジェシカ・ブルーダー 17年)ということで、所謂放浪モノは好きで、ジョン・クラカワー原作の映画「イントゥ・ザ・ワイルド」(07年 米)ほか、何作かを見ていたのだが、「やっぱり」の感。つまりは寂しすぎるのだ。

「ノマドランド」で見せてくれるのはアメリカ西部の荒涼な自然と、そこに集まった貧しい車上生活者たち。ガソリンは格安、高速料金などほとんどいらないアメリカ。車さえあればどこにでも行くことができる身軽さに羨ましさを感じつつも、最近気付いたこと。「どこへ行っても、ひとりではつまらない」

ファンという中年女(オスカー女優フランシス・マクドーマンドが好演。ただこの女優の本来のキャラなのかも・・)は訪れた車上生活者の集まりで、多くの人と出会うのだが、結局彼らと親しくなってもその場かぎりの関係。寂寞、これがこの映画の主題なのか。いい映画だと思ったが、メゲそうなので二度見はできないなー。

唐突に、昔読んだ本、「アウトサイダー」(コリン・ウイルソン 88年 集英社文庫)を思い出した。

1 件のコメント:

  1. 人生が放浪なのは別段として、放浪が人生、生活になってしまうと侘しい、ということですね。米国ではノマドの多くが選択の結果ではないのでしょうし。

    アウトサイダーは古い本ですね。コリン・ウィルソンはまさにアウトサイダーだったようですね。アウトサイダーに、共感よりも同情を感じる大人になってしまいました。何者でもなれていない自身が一番哀れです。

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