2021年6月28日月曜日

ロバの耳通信「名もなき世界のエンドロール」

 「名もなき世界のエンドロール」(21年 邦画)

予告編を動画サイトでチラ見してハヤリのアイドル総出演の映画かと誤解していた。コロナのせいでどこにも出かけられないから、まあいいかと時間つぶしのつもりで見始めたのだが、ラストまで結末が読めず。映画のツリでは”ラスト20分、想像を絶する衝撃の・・”とあったし、結局最後まで見るハメに。結果オーライ。

途中までは、小学生から仲良しの3人組の青春物語だから、甘酸っぱさと青臭さのせめぎ合いで、ジジイにはややつらい時間だったが、主役の3人キダ - 岩田剛典、マコト - 新田真剣佑、ヨッチ - 山田杏奈の誰もワタシは知らなかったし、顔と名前が一致する配役もわずか。特に、おさななじみのヨッチ役がたとえば橋本環奈とかじゃないのが良かった。念の為に言うが、橋本環奈は好きだよ。

ヨッチ役の山田杏奈は世間では結構有名なモデル・女優らしいのだけれども、この映画の中では特段かわいくもない普通の女の子、というのが個人的にいちばん良かった。つまり、近年流行りの<看板アイドル+俳優救済のための有名役者総出演>の皆ヨイショ映画じゃなかったのが良かった。

原作(行成薫)のチカラか監督(佐藤祐市、菊川誠)・脚本(相馬光)のチカラか、とにかくうるさいジジイは最後までクギ付けにされてしまった。

追想シーンが多いから時間が前後するわ、キダとマコトが歳をとらないから余計に混乱するわでワタシはソコで混乱したが、アタマの切替の早い若い人はこういう設定もすんなり受け入れられるのだろうか。とにかく、面白かった。ただ時系列を前後させず連続テレビドラマにしてもよかったか。

2021年6月23日水曜日

ロバの耳通信「世界の終わり、あるいは始まり」「カップルズ」

「世界の終わり、あるいは始まり」(08年 歌野晶午 角川文庫)

ずっと、歌野晶午を避けてきてきた。いままで何冊かとってみたが、ほとんどは最初の数行で、頑張って数ページで断念。たまたま表紙に惹かれて借り出した文庫本がコレ。著者紹介をチェックしたら、「このミス」で1位をとったことがあるという。そうかそうか、それなら面白い本があるのかもと。
中学生の息子が連続誘拐殺人の犯人らしいと知った父親の苦悩を描いている。500余ページの半分を気に入らない文章に引っかかりながらも読んだ。文章がクドイのだ。切れ味が悪いと言ってもいい。セリフがやたらと長いし、口語と文語が混じっていて不自然だ。うん、ただのワタシの感想だが、とにかく気に入らなかった。ただ、”人の不幸は、自分とは関係ない”ことを何度も繰り返す会社員である父親に、ワタシは共感し、息子が連続誘拐犯人らしいと知ったときの驚きと落胆もわかるような気がした。のこりの半分は、その後の物語の展開を読者に委ねた。ひどいな、この結末は。
まあ、いいか、半分は面白く読めて、とにかく最後まで読み通すことができた。うん、だから冬の半日、窓際の明るい陽射しの中の時間をこの本で過ごせたことでよしとしよう。歌野のこのミス受賞作品が「葉桜の季節に君を想うということか」(03年)だと。もう一冊だけ読んで見ようと思う。

「カップルズ」(13年 佐藤正午 小学館文庫)

作家の視点で身の回りに起きたことを描いた7短編集。どれも、起こりそうもないことをありそうな話として書いていて、そのテを苦手とするワタシはすっかりダレてしまった。ワタシじゃない誰かが佐藤正午の本の解説の中で、”後で思い出そうとしても、どんな話だったか中々思い出せないのが多い”と書いていて、いたく同感。

「アンダーリポート/ブルー」(15年 小学館文庫)食いつきは良くなかったが、結局ハマってしまった。直木賞受賞作「月の満ち欠け」(17年 岩波書店)何度か読んで、やっぱりハマった。「5」(10年 角川文庫)作家が主人公で超能力モノ。「ダンスホール」(13年 光文社文庫)はイライラが募っただけ。「カップルズ」もハズレ、しかもなんだこの気の抜けたような表紙は。もう、いいかな佐藤正午。


2021年6月19日土曜日

ロバの耳通信「隻眼の少女」「宿屋めぐり」「けいどろ」

図書館の「新しく入りました」のところにあったピカピカ(新刊ではないが更新か新入荷)の文庫本、運が悪いというか、3冊とも好みじゃなかった・・と、それだけのハナシだが。ピカピカの本だったから、なんだか、口惜しい。

「隻眼の少女」(13年 摩耶雄嵩 文春文庫)

図書館から借りだした時のチェック。著者紹介にこの作品が日本推理作家協会賞と本格ミステリー大賞のダブル受賞だと。面白いハズと自分の脳に刷り込んでの2度目の挑戦。

新刊の時に、当時通勤途中にあった雰囲気のいい本屋さんーいつも、結構混んでいて、新刊の平積みゾーンが通路側にあり新刊をベストセラー順にディスプレイした棚の後ろがレジ。だから店員さんと顔を合わせることがなく、安心して「存分に」立ち読みできる本屋さんーでこの本を見つけ読み始めたのだが、最初の数ページで挫折していたのだ。これが1度目。
で、図書館で見つけての再挑戦となったのだが、ガマンにガマンをして100ページちょい前でまた、挫折。ダブル受賞だとぉ?なんだ、こりゃ。ゼンゼン面白くない。信頼している読書メーターでも星4つ。オカシイ。解説によれば「獄門島」(横溝正史)から血生臭さを抜いた正統派の謎解きで、”精密な論理を紡いだ””美少女探偵”が活躍すると。
うーん、そうなのか。正統派の謎解きも、精密な論理展開も、美少女探偵も全くワタシの好みのところではないのだ。もしかしたら、あと数ページ後に、ばーんと面白くなるとしても、だ。本屋さんにも、図書館にも、ブックオフにも、電子ブックストアにも、読みたい本、まだ読んでいないけれど、きっと面白い本がワタシを待っていると確信するから、気に入らない本のあと、もしかしたらに期待し数ページをガマンして読むことはしない。だから、3度目の挑戦はない。さようなら「隻眼の少女」

「宿屋めぐり」(12年 町田 康 講談社文庫)

町田 康は芥川賞など多くの賞をもらっている有名な作家らしい。この「宿屋めぐり」も野間文芸賞の受賞作だと。08年に単行本、12年に講談社文庫になっているからソコソコ面白い本かと期待し図書館から借りだした。異世界に入り込んだ主人公がいろいろな不思議な体験をしながら宿屋をめぐるという設定。とはいえ、ストーリーに一貫性はなく、あっちに行ったり、こっちに行ったり。登場人物も脈絡なく、セリフも擬音だらけで正統派を自称しているワタシには全く受け入れ難い。うーん、ワタシの固くなった受け入れ能力にも若干の疚しさは感じるものの、700ページ余のうちの100ページを読んだところで、挫折。こういうときは、あとがきという解説を読んで、再挑戦するのもアリと、幻想小説で著名な笙野頼子による解説を読むことにしたら、この解説もブッ飛んでハチャメチャで、余計に混迷の道へ。で、それ以上読むことを放棄。

「けいどろ」(14年 荒木源 小学館文庫)

泥棒稼業の男が刑務所を出た日にお迎えしてくれたのが泥棒を捕まえた刑事で、刑事から泥棒への頼み事が「殺してくれ」。とんでもないストーリーを全編関西弁で語られる。初めての作家で、出だしは読みやすいものの、何だこりゃの奇妙な展開にとまどいつつも結局最後まで読んでしまった。同作家の「ちょんまげぷりん」(小学館文庫)が映画化もされ大ヒットしたというが、図書館の文庫本の棚はこの「けいどろ」だけ。表紙からして、ライトノベルかコミック風で、ちょっとね、とはおもったが、裏表紙の解説に惹かれて。うん、面白かったけれどなにもココロに残るものがなかったから、220ページもやや退屈。もういいか。 

さようなら、町田 康、笙野頼子、荒木源。

2021年6月14日月曜日

ロバの耳伝説「タソガレ」「あるキング」「小説 イキガミ」

 「タソガレ」(14年 沢村凛 講談社文庫)

読み始めてすぐに、なんだこの面白くなさ、違和感は、と感じ著者をチェックしたらうっすら記憶があり、またやっちまったと。ああアノ沢村凛かあ(ゴメンナサイ)。「カタブツ」(08年 沢村凛 講談社文庫)のツクリモノのつまらなさに懲りていたはずじゃないか。「タソガレ」のウリが「相貌失認」、カンタンに言えば人の顔を覚えられないという病気。100人に2人くらいはいるらしいから、そう珍しい病気でもない。本当は深刻な「相貌失認」のために起きるドタバタを時にコミカルに描いている。「相貌失認」の多くの症例を調べ、その患者の心情を深堀りしていたら舞台をパリなんかにしなくともいい作品になったのにと、悔しい。

「あるキング」(12年 伊坂幸太郎 徳間文庫)

井坂幸太郎の小説は前に「グラスホッパー」とか何冊を手に取ってみたが、とっかかりに躓いたり、ストーリーについてゆけなくて途中で挫折したりで「ちゃんと」読んだことはなかったが、この「あるキング」の裏表紙にシェークスピアの「マクベス」の3人の魔女やら台詞の引用がありちょっと変わっていていいかと。野球にのめり込んだ男の伝記みたいな小説なのだが、奇を衒っている割には丁寧に書かれており(あたりまえか)、面白く読んだ。近年、漫画の原作が若い俳優を登用して映画化されヒットしたりして、なんだか面白いことになってるから、これも漫画や映画にしたらいいかな。落ち着いたから、井坂の別の作品にチャレンジしてみよう。

「小説 イキガミ」(08年 百瀬しのぶ 原作 間瀬元朗 小学館文庫)

「イキガミ」については映画が出た時(08年)にストーリーや配役が魅力で見たいと思っているうちに封切り期間がすぎてしまい、そのままになっていた。映画や漫画をもとに本を書くのをノベライズというらしい。百瀬しのぶというヒトはこのノベライズで食ってるらしい。うーん、職業としてはアリなんだろうが、著者なのか。「小説 イキガミ」の奥付けには著者として書かれている。面白いのは原作が面白いからで、発想も登場人物の設定もストーリーの展開も原作のチカラだと思う。「小説 イキガミ」は途中でダラけてしまったので挫折。漫画か映画にしよう。

2021年6月6日日曜日

ロバの耳通信「約束のネバーランド」

 「約束のネバーランド」(20年 邦画)

原作は白井カイウ(原作)、出水ぽすか(作画)による日本の漫画(「週刊少年ジャンプ」(16年~ 集英社))。テレビアニメ(19年~ フジテレビ)やWebラジオ/YouTube(19年~)、ゲーム(21年~ スマホアプリ)にもなっていて近く海外ドラマとしてAmazon Prime Videoで配信されるらしい。

スジは、食人鬼と人間が長く続いた戦争のあとに、それぞれに居住区を分けて食人鬼が人間エリアに来て人間を襲わないように、孤児を食人鬼エリアの農場で育てるいうとんでもないハナシ。浜辺美波が主演のこの映画はその人間農場からの脱出劇を描いている。イシグロ・カズオ原作で臓器を取るための孤児院を描いた「わたしを離さないで」(10年 英・米)と子供たちによる脱出劇「メイズランナー」(18年 米)を合わせた感じ。

孤児たちが金髪だったり(設定が外国らしい)、食人鬼のCGがチャチいのが興ざめだったが、ストーリーが良くできていて、人物描写も丁寧。脱出劇をハラハラしながら楽しめた。

2021年6月3日木曜日

ロバの耳通信「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」「ホテルローヤル」

 「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」(20年 邦画)

「鬼滅の刃」(漫画)も「鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編」(テレビアニメ)も前に見ていて、ストーリーの面白さに比べ、眼だけが大きな少女漫画のような稚拙な人物作画に辟易していたから、「無限列車編」が劇場公開され、映画館を出てきた若い人たちの”良かった””涙が出た”のインタビュー発言に、そんなものかと半ば呆れていたのだが、数日前のニュースで国内で400万人が鑑賞、興行成績も世界一(20年)ということで、そうなると見てないのもなんだか悔しい思いがして動画サイトをチェック。

原作漫画の一部やアニメの「立志編」を見ていたからスジが頭にはいっており、「無限列車編」もスンナリ見れた。稚拙な人物作画は変わりはないが、背景作画、ストーリー展開、音楽がよくできていて、大きなスクリーンならもっと楽しめたかと。これだけ当たると二匹目のドジョウ狙いで、続編も出るのだろうが、もういいかな。少なくともお金を払っても見たい映画じゃない。

「ホテルローヤル」(20年 邦画)

桜木紫乃の同名の小説短編集の映画化。桜木作品は何冊か読んで好きになっていたし、原作が直木賞受賞作ということで見たが、大いに後悔。
主演の波留も、共演の松山ケンイチも、ゼンゼン役に合ってない。波留ちゃんなんて、朝ドラのお嬢さん役でやめとけばよかったと思うし、ファンだったから結構好意的に見ていたが、表情はないし、セリフは棒読み。松山クンも脚本が、そうなっているのかもしれないがまるで漫才。ほかの配役もどうしてこうなるのと思うほど。

監督(武正晴)が北海道にこだわって作ったと言っている(wiki)けれど、こだわったところをちゃんと見せてくださいな。なにより悔しいのが、あんなに感動してきた桜木の原作の映画だということ。