2021年10月28日木曜日

ロバの耳通信「コンティニュー」「レミニセンス」期待外れの新作たち

 「コンティニュー」(21年 米)原題: Boss Level

タイム・ループ”と呼ばれている、とんでもない”カギ”を知るまでの退屈な時間。ソレをわかってしまえばただの絵空事。主人公のマッチョガイ(フランク・グリロ)何度も殺されては生き返ってやりなおし。ド派手なアクションシーンも、デジャブ映像の繰り返し、しかも何度も何度もくりかえされた2時間強は辟易。

共演のメル・ギブソン、ナオミ・ワッツ、ミシェール・ヨーもチョイ役扱い。ラストにタイムマシンにヒーローが乗り込んで終わるなんて、安っぽいSF映画じゃないか。19年公開予定が延びに延びて、21年のHulu公開だと。コロナのせいじゃないと思う。金がかかった映画だと思うが、映画館でまた見たい作品じゃない。

「レミニセンス」(21年 米)原題:Reminiscence

舞台は近未来、気候変動のため海面が上昇してイタリアのどこかの都市のようになったマイアミ。記憶を3Dの画像に映し出し人々が追憶を懐かしんでもらうことを生業にしている男が主人公(ヒュー・ジャックマン)。そこへ、鍵をなくしてしまったので、記憶の中からさがしてくれと頼んできた女(レベッカ・ファーガソン)。女に一目惚れしてしまった男が、いろいろな人の記憶の中から、消えてしまった女を探すという、ラブ・ストーリー。女がヤク中だったり、ヤクザがうしろにいたりでいろんなサブストーリーを2時間に押し込んでいるが、メリ・ハリがないので混乱、なによりダレた。

タンディ・ニュートンやアンジェラ・サラフィアンが良い役で出演していたので調べてみたら、監督や制作陣が「ウエストワールド」(16年 米TVドラマ)の監督・脚本だと。勝手な推測だが、この作品、原作がないのではないか。脚本家がスジを作り、監督とかプロデューサーがソレをアレンジしながら作ってゆく。だから、ホネがないのだ。小説などでいう、「テーマ」だ。ソレがないのだ。

この作品、気候変動や貧富の格差など「も」提起。結局は、男が一目惚れした女の影を追いかける、うん、それだけでもいいけど、ラブ・ストーリーにしてはもっと何かがほしい。オトナの恋だから、出会ったらエッチもいいけど、ソコはナシにしてほしかったね。女性の監督にはムリな注文かな。

ヒュー・ジャックマンが恋慕する娼婦役がスウェーデン女優のレベッカ・ファーガソン。「ミッション:インポッシブル」シリーズ(15年~)で有名な俳優だとか。うーん、覚えてない。好きなタイプじゃないな、ハスキー声の歌はうまいけど。


2021年10月17日日曜日

ロバの耳通信「ドント・ブリーズ2」「神弓-KAMIYUMI-」

 「ドント・ブリーズ2」(21年 米)原題: Don't Breathe 2

「ドント・ブリーズ」(16年 米)を見損ねて、動画サイトでも散々探したが見つからず、YouTubeの予告編やメッチャ怖いシーンのかき集めとかでごまかしていたのだけれども、続編が今年放映ということで楽しみにしていた。

制作陣に大ファンのサム・ライミが入っていて、脚本も監督(フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス)も主演(「アバター」(09年 米)で強面マイルズ・クオリッチ大佐を演じたスティーヴン・ラング)も本編と同じ。

まさに息を詰めて見た、これぞスリラー。出るぞ出るぞと脅かすだけでなく、目をそむけたくなる残酷シーンも満載。

エンドロールでさらなる続編も示唆。こうなると、余計に本編を見たい。もちろん続々編も、見たい。3作揃えて、オールナイトで見たい。


「神弓-KAMIYUMI-」(11年 韓)原題:최종병기 활(最終兵器 弓)

17世紀に起きた満州国が朝鮮に攻め込んだ丙子の乱を舞台に、妹を満州軍に拉致された弓の名手の兄が満州軍に戦いを挑むという物語。映画が公開されたとした年の興行成績トップだったとのこと(wiki)だが、迫害に耐えて巨悪(中国)を倒す、艱難辛苦、兄妹愛など韓国人の好きなストーリー構成はなんと我が国の思想の根幹と共通点の多いことか。

撮影・音楽(キム・テソン)への感動は忘れられないものになった。

映画後半の弓の名手同士の熾烈な戦いは、役者の動きから武具、衣装などにも一切の手抜きが感じられない。韓国映画黄金の時代の作品とはいえ、これだけの作品は稀だと思う。

2021年10月14日木曜日

ロバの耳通信「生きているかい?」「木練柿」

「生きているかい?」(14年 南木圭士 文春文庫)

信州で医師を続けている南木のエッセイ集。日々の暮らしの中で感じる季節についての感想が多い。不平不満が他人の方に向いていないのがいい。浸透圧というのだろうか、読んでいてジワーっと浸み込むのがわかる。何が浸み込むのだろうか、快いか不快かでいえばすこし快いほうだが、喜びまでには至らない。共感とか安心みたいなものか。
本を読むときはだいたいは2、3冊を並行して読むことが多い。通勤が読書時間だったころは立ったまま読める文庫本ばかりだったが、近年は居間やフトンで読むことが多くなり、ハードカバーも増えた。いま、並行して読んでいるのが「宮本輝 全短編 下」(07年 集英社)で、宮本の本も浸みる。ミステリーやハードボイルドもよく読む乱読のワタシだがそういう忙しいモノを続けて読んでいると、息抜きに優しく浸み込むものが欲しくなる。

「木練柿(こねりがき)」(12年 あさのあつこ 光文社文庫)

図書館でたまたま手に取って、少し読んでみた。藤沢周平の時代小説のように出だしから快くて、声に出して読んでみたいと思った。声にすると、それが自分の声でもココロが揺すられる気がする。藤沢の作品は近年読むよりも、YouTubeの朗読を聞くことが多い。ナイトキャップがわり。この作品も上手な朗読で聞いてみたいとも思うが、あさののこの作品はミステリーの謎解きみたいなところもあって、藤沢のソレのようにストーリーの流れに身を委ねることもできない。立ち止まりながら謎解きをするのもそれはそれで楽しい。

あさのあつこは「バッテリー」(03年 角川文庫ほか)くらいしか知らなかったが「木練柿」の情緒豊かな文章が気に入ってしまった。裏表紙の解説によれば「木練柿」はシリーズの第3作にあたり、ほかに「弥勒の月」「夜叉桜」があるという。うーん、まいった。また読みたい本が増えてしまった。


2021年10月11日月曜日

ロバの耳通信 「アンタッチャブル」

 「アンタッチャブル」(87年 米)原題:The Untachables

何度も見た映画なのにまた見入ってしまった。寝る前にテレビを点けたらNHKで放映中で、結局最後まで見てしまった。

いくつか気づいたこと。名作は色褪せない。15.6のノートPCで見るネット動画に比べ、40インチのテレビ画面は格段にキレイ。CMが入らないテレビ放映なら結構楽しめる。なかなか映画館にも行けない今日び、テレビという手があったかと。本気でFirestickを検討しよう。

「アンタッチャブル」は禁酒法時代のFBIとイタリアンマフィアの戦いを描いたもの。

監督がブライアン・デ・パルマ、エリオット・ネスを演じたのがまだ若きケビン・コスナー、アル・カポネ役がロバート・デ・ニーロほかにショーン・コネリー、アンディ・ガルシア、チャールズ・マーティン・スミスなどパラマウント映画全盛期らしい豪華配役。殺し屋役のビリー・ドラゴは大のお気に入りだったが、配役のかなりが鬼籍に入ってしまった。音楽がエンニオ・モリコーネ、ああこのひとも昨年亡くなったんだ。

もう一度書く。名作は色褪せない。

2021年10月7日木曜日

ロバの耳通信 「The Witch 魔女」「THE INFORMER/三秒間の死角」

 「The Witch 魔女」(17年 韓)原題:The Witch: Part 1 – The Subversion

予備知識なしで見始めた韓国映画。林を逃げまどう血だらけの少女。お、いつもの韓国映画とちょっと違うな、と。前半から中盤までは、スター誕生みたいなオーディション番組で勝ち上がってゆく酪農農家の少女とその親友の物語、ここはいつもの青春韓ドラ風で楽しそうだがダレダレ、後半にはいったところで物語が急展開。あっという間にスピード感や血生臭さが韓国ノアールいっぱいのジェットコースター。目が離せなくなってアクションを楽しんでいたら2時間強が過ぎていた。

おお、こういうスジだったのかとオープニングシーンと繋がり、後半のファイティングを二度見。狭いところでナイフで戦うタイのアクション映画をパクったところもあったが、面白かったから許す。

主演の少女がよかった。キレイでも可愛くもない小さなドングリ眼のステレオタイプの韓国顔、血だらけで微笑むキム・ダミが気に入った。チョ・ミンス(「嘆きのピエタ」12年)、パク・ヒスン(「サスペクト 哀しき容疑者」13年)、チェ・ウシク(「新感染 ファイナル・エクスプレス」16年)ほか個性派揃いのスゴイ配役。監督が「新しき世界」(13年)などで韓国ノワール映画を世界にアピールしたパク・フンジョン。まあ、この監督、配役で面白くないはずがないのだが。

続編がクランクアップされたとの報道もあったから、公開が楽しみ。ゼッタイ見るぞ。コロナ明けてたら、ぜひ映画館で。カミさんはこういう映画は怖いと言うにきまっているから、ポップコーンの大箱とコーラのL抱えてひとりで見るか。楽しい妄想だがしばらくはないだろーな。

「THE INFORMER/三秒間の死角」(19年 英)原題:The Informer

ミステリーものは大好きだが、潜入捜査とか二重スパイ、さらに家族を人質に取られた主人公がニッチもサッチも行けない状況に追い込まれるなんて映画はハラハラのし通しで落ち着かない。主人公役がメジャーな俳優だと、ラストのハッピーエンドが予想されるからそれなりに楽しむことができるのだが、この作品の主人公はスウェーデン男優のジョエル・キナマンで全く知らない役者。脇役にクライヴ・オーウェンやロザムンド・パイクなど超有名な俳優が出てるから落とし所が読めなかったのだけれども、主役は新人やややマイナー、脇を有名俳優で固めるというキャスティングは「The Witch 魔女」と同じつくりか。まあ、面白かったから不満はない。

主人公の妻役でキューバ出身のアナ・デ・アルマスは個人的に大好きな女優。「ブレードランナー 2049」(17年 米)のミステリアスな印象とかなり違っていて、優しく強い母親役。新作の「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」(21年 英・米)にも出ているらしいから、そっちも楽しみ。


2021年10月3日日曜日

ロバの耳通信「神童」

「神童」(07年 邦画)

原作はさそうあきらの同名の漫画。さそうあきらは幼少時からピアノを習っていたとかで「マエストロ」(03年~ 双葉社「漫画アクション」)など音楽をテーマにした作品が多く、そのいくつかは映画化もされている。

主演の天才ピアニスト成瀬うた<うた>を演じる成海璃子をはじめ、うたにピアノを教わり音大に受かる菊名和音<ワオン>役の松山ケンイチ、ワオンの彼女加茂川香音<カオン>役の貫地谷しほり(役名がみな音楽にかかわる単語なのがいかにも漫画らしい)などなど、配役が全員ミスマッチでちぐはぐ感は否めないが、向井康介の脚本で丁寧に作られているからピアノ音楽映画としてはイイ線いったのではないか。
突然の体調不良で演奏会に出演できなくなったリヒテンシュタインの代役としてうたが指名され、初見のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番を、楽譜を高さの足りないピアノイスの尻の下に敷いて暗譜で演奏するなんてのは、漫画じゃないとありえないだろう。音楽をハトリ・ミホが担当して、主題歌もミホのリプルソング(原田郁子)でとても良い作品に仕上がっていた。ただ、ワタシがこの映画のことを知ったのが、YouTubeでフクシマのテーマソングとなっているリプルソングを知り、YouTubeめぐりでこの映画を見つけたくらいだから、映画としてはあまり話題にならなかったんじゃないかな。ワタシは気に入ったけど。