2021年12月15日水曜日

ロバの耳通信「クライ・マッチョ」「THE GUILTY/ギルティ」

 「クライ・マッチョ」(21年 米)原題:Cry Macho

クリント・イーストウッドの映画(製作・監督・主演)ということでどうしても見たかった。彼の作品のほとんどを見ていて、ストーリー展開に戸惑ったことなどついぞ経験がなかったから予告編も書評もパス。ワーナー・ブラザースのオープニングマークだけで、期待感で喉の乾き。

昔はロデオの名手、いまは馬の調教師で細々と暮らしを立てている老カウボーイがイーストウッドの役。古い友人から、メキシコにいて前妻と暮らしている息子を連れ戻してくれと頼まれる。時代は70年代。貧しい町で闘鶏で暮らしを立てていた少年を、前妻の手下のギャングに追われながら国境まで連れ帰るそれだけの物語。老カウボーイとメキシコ少年の交流なんて、クリント・イーストウッドにピッタリの作品じゃないか。少年を国境の父親に引き合わせ、自らは途中で世話になった食堂の店主、孫たちと暮らす未亡人のもとに引き返す。

原題のMachoはいわゆるマッチョ(強い男)の意味と少年が飼っていて、ラストで老カウボーイに託される雄鶏の名前。訳せば、泣くなマッチョか。

クリント・イーストウッドはこの作品の撮影時は90歳くらいか。ヨレヨレのジジイが未亡人に請われてダンスを踊るシーンで流れたスローのラテン音楽に涙が出そうになった。この曲、タイトルバックにも流されたのだが、歳を取ること、いろいろなことがうまく行かないままに暮らしを紡いでいる自分をこの作品の老カウボーイに重ね合わせ、またセンチメンタルに浸る事ができた。


「THE GUILTY/ギルティ」(21年 米)原題:The Guilty

緊急通報室(911 日本の119に相当)のオペレーターのジョー(ジェイク・ジレンホール)は裁判待ちの刑事。若者を殺してしまったが、明日の裁判で同僚に正当防衛の証言をしてもらう約束をとりつけてはいるものの心中穏やかではない。数年前に離婚し、娘を妻にとられて声だけでも聞きたいと夜中に元妻に電話するジョー。もちろん断られ、持病の喘息の調子も良くなく吸入器が離せない。つまりは、八方塞がりのパツンパツン状態のジョー。

そんな時、誘拐されているという女性からの911コール。女性のハナシは要領を得ず、救助を手配しようにも車や場所の特定もできない。パトカーに救助を依頼するも情報不足で動けず。女性の幼い娘やダンナも追っかけて電話するが、こっちもうまくゆかず、ジョーは茹で蛙状態。

最初に電話をかけてきた女性が精神病で、ダンナが病院に連れてゆこうとしていたという事実に気付いたジョーは自分の早とちりに精神崩壊。

薄暗い緊急通報室のブースの中で額に脂汗をにじませたジェイク・ジレンホールがヘッドセットを通して、なだめ、すかし、大声をあげているのを見続けた約1時間半。疲れた、が面白かった。

同名のデンマーク映画(18年)のリメイクだそうだが、オリジナルも見たい。TBSラジオがオーディオドラマ化した(wiki)ということで探したらYouTubeに。YouTubeはスゴイ、が、TBSラジオのソレは、声優のせいか、脚本の出来のせいか、多分両方のミスキャストだろうが、ひどいものだった。

字幕付き映画のジェイク・ジレンホールは、声も表情も圧巻の出来だった。ポスターも最高!


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