2021年12月5日日曜日

ロバの耳通信「コンプライアンス 服従の心理」「Bad Moon Rising」

「コンプライアンス 服従の心理」(12年 米)

マックの店長が、若い女性従業員がお金を盗んだから裸にしても調べろというニセ刑事のいたずら電話を真に受け、長時間にわたり従業員を部屋に閉じ込め半裸のまま詰問し、従業員に莫大な賠償金を求められたという実話をもとに作られた映画。この中年女性店長役アン・ダウトが実にハマっていて、アン・ダウトはこの作品で多くの賞を獲得。刑事だという電話に舞い上がってしまった店長は、日々の多忙や不満を従業員に向ける。

この映画、刑事(オカミ)と重責の店長(シモジモ)、店長(オヤダマ)と若い従業員(コブン)というステレオタイプの従属関係により引き起こされたカタストロフィーを描いたが、ワレワレの実生活でも、管理職とヒラ社員、医者と患者、親と子など従属関係であっていい筈のない関係がある。映画のように賠償金を求めることもできず、いつも上目使いでへらへらとおどけ、触ると死んだふりをするダンゴムシの暮らしが続く。

「Bad Moon Rising」(15年 邦画)

この作品に記憶をなくした女トワコで出ている菜葉菜(なはな)という女優が気に入っててね。可愛いわけでもなく、色っぽいわけでもなくそこいらにいるフツーのオネーサンって感じ。寝起きの顔っていうのか、腫れぼったい不機嫌な顔で少し甲高い声。好きな声じゃない。ほとんどないのだけれど、微笑む顔は口角をちょっと上げた作り笑いで、ふっと安心する。それくらいいつも暗い。
映画は介護とか暗い話題をつなぎ合わせたただけで意味不明。音量でメリハリをつけようとして失敗している音楽。効果音は風力発電機のブンブンという低い音。タイトルエンドで流れる台湾のRyan Rieが歌う「人魚」、中国語だからもちろん意味不明だが、曲はいい。すごくいい。
一応最後まで見て、やっぱり菜葉菜はいいと思った。2度は見ないけど。

菜葉菜だけでも気に入ったら、沖縄のユタを題材にした「サーダカー」(07年)、弟の恋人に嫉妬する「どんずまり便器」(12年)を見ておくれ。映画がつまらない分、菜葉菜が光ってるから。

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