2022年4月27日水曜日

ロバの耳通信「THE BATMAN-ザ・バットマン-」「Gold(原題)」「アンチャーテッド」

下馬評の良かった新作映画3本をチェック。雑誌やネットの前評判の割に満足感ゼロの3戦3敗。それぞれに本当は面白い作品なのかもしれない。

下がる様子のないコロナ感染者数、武器をよこせと叫んでいるばかりのどこかの大統領、予想よりずっと上がっている物価に将来の不安。この数日のトップニュースは北海道の観光船の事故。身内を失ったと誰かが泣いていて、観光船の会社の社長が殺人者と誹謗されている。そんなこんなで不安が先に立ち、ワタシの気持ちはすっかりメゲている。ネット動画なんて見てる場合かとも思うが、悪いことばっかりじゃ一層メゲてしまうから。


「THE BATMAN-ザ・バットマン-」(22年 米)原題:The Batman

バットマンの映画もそろそろタネ切れかと思っていたところに、動画サイトの予告編。暗い画面に重低音の音楽。雰囲気は嫌いじゃないけど、暗すぎ。バットマンの生誕から活躍まで、ファンならばだいたいは皆知ってる。で、またソノ2番煎じかとかなり辟易。イタブラれるバットマンなんて見たくない。わかりやすい勧善懲悪でいいから、ただただ悪漢を相手に大活躍してほしいのよ。キリの悪いラストからは、続々、続々々編の予感。うーん、「バットマン」、もういいかな。

「Gold(原題)」(22年 オーストラリア)

邦題不明、似たような名前の作品多いからね。これから日本公開なのかな?オーストラリアでどこかを目指す旅人が、ガイドを雇い砂漠を横断中にでっかい金塊を見つける。あとはお決まりの、独り占めしたいふたりの物語。結果はひとりは野犬に襲われ、もうひとりはどこからか飛んできた矢で、結局ふたりとも死んでしまうという、まあ当たり前のラスト。オーストラリアの砂漠を砂塵を巻き上げながら突っ走るボロ車に、メル・ギブソンの「マッドマックス」(79年 オーストラリア)を思い出した。アノ映画は良かった。

「アンチャーテッド」(22年 米)

ゲーム「アンチャーテッド」シリーズ(PS3 07~)の実写化。「インディージョーンズ」と「トゥームレイダー」を足した、謎解きRPGのノリだが、この手の映画やゲーム動画は散々見てきたから、意外性が感じられずタイクツ。パソコンの小さな画面とイヤフォン越しのサウンドじゃムリもないか。せめて、映画館の大画面と大音響ならもっと楽しめたかとも思うが、コロナの見通しも立っていないから映画館での鑑賞など「ないものねだり」なのだろう。



2022年4月25日月曜日

ロバの耳通信「スワン・ソング」「ラッキー」

 「スワン・ソング」(21年 米)原題:Swan Song

多分、初めてのアップルオリジナルの作品。致命的な疾病でいつ死んでもおかしくない男が家族のために自分のクローンを申し込むというSF。登場人物は少なく、主人公とその家族が黒人、クローン会社の社長が白人の老女、医者がアジア人とか、なんだか男女や人種の多様性を意識したような配役。ありえないSFなのに、ビックリもアクションも、最後のドンデン返しもない。映像や音楽も美しく妙な安心感、これがアップルの映画か。そう思って見続けたせいか、なんだろうこの物足りな感。気付いたのが主演のマハーシャラ・アリやそのその妻を演じたナオミ・ハリスが好きになれなかったこと。好き嫌いは個人的な感想だし、どうしようもないのだが、配役って大事だな、とあらためて。

中国系アメリカ人の父と韓国系アメリカ人の母を持つラッパーのオークワフィナ(Awkwafina)に会えたのが嬉しかった。まあ、愛嬌のある顔なのだが表情も喋りも”癒やし”を感じた。オークワフィナと初めて会ったのが「シャン・チー/テン・リングスの伝説」(21年 米)。明るいキャラと喋りにすっかりまいってしまっていたのだが、「スワン・ソング」の彼女も、とてもよかった。とてもよかった、なんて平凡な言い方をしたが、まあ、とてつもなく気に入ってしまったのだ。

題名と映画の内容が結びつかなかったので調べてみたら、”白鳥は死ぬ間際に最も美しい歌を歌うという伝説から、人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すこと、またその作品を表す言葉”(weblioほか)だと。ああ、なるほどね。


「ラッキー」(20年 米)原題:Lucky

ナターシャケルマーニ(知らん!)監督のホラー、主役も務めるブレア・グラント(これも知らん!)脚本のホラー。

毎晩毎晩、作家のオバサンを襲う男との格闘の日々。毎日血だらけで戦っているのに、ダンナも義妹も警察も救急隊も、誰も信じてくれない。おー、これはこの作家がオカシクなっていてとか、別れたいダンナによるものかとか、ミステリー映画を見るような気持ちで推理。最後はアッと驚くどんでん返しかと期待して見ていたのだが結局種明かしはナシ。ストレスたまっただけの映画。うーん、このイラダチを誰にどう伝えよう。


2022年4月20日水曜日

ロバの耳通信「きみはいい子」

 「きみはいい子」(14年 邦画)

キャッチが ”抱きしめられたい。子どもだって。おとなだって。”親による子どもの虐待がテーマ。自らも幼い頃に虐待されていて、娘の虐待をやめられない母親役の尾野真千子がハマっていた。この女優、メが怖くて好きじゃないが、役者としては最高だったんじゃないか。あと、この映画の見どころは、たくさんの子役。みんな、すごい。虐待を受けるコや、いじめっこや発達障害の役、みんな、みんなオトナの俳優たちよりずっと良かった。
小学校の先生が欠席した生徒の家に息せき切って走ってゆきドアをたたくラスト。どんな意味があったのだろう。ググっていろんな方の考えを尋ねてみたが、どれも納得できず。

見始めて、思い出した別の映画ー「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(18年 邦画)。同じ児童虐待がテーマだったが、こっちの母親役が吉田羊。前にどこかで書いたので、悪口を繰り返すのも良くないだろうが、この映画の役にゼンゼン合ってなくて失望。こっちもすごくいい映画だったのに。二つの映画で共通しているのが、母親業の難しさと、辛い子供も誰かに優しくされることで救われるということ。

イロイロあったワタシにも、なんでも許してくれて、いつも優しかったバアチャンがいた。優しくされた思い出で、その何倍もあった辛いことに耐えられたと思う。これからでも遅くはない筈、誰かに優しいジジイでありたい。


2022年4月15日金曜日

ロバの耳通信「空白」4月なのに寒い・・

 台風1号の影響とかで、昨日から急に寒くなった。出かけなくてもいい雨の日。こういう日は自宅映画会に限る。熱いコーヒーが嬉しい。コロナとかウクライナとか出口の見えない中、一杯のコーヒーの暖かさを嬉しく思えるささやかな暮らし。続くといいな。

「空白」(21年 邦画)

万引き未遂でスーパー店長に追いかけられた女子中学生が交通事故で死んでしまう。娘の潔白を信じる父子家庭の女子中学生の父親が、スーパー店長を追い回すという物語。似たような実際の事件はあったらしいが、ストーリーは監督・脚本の𠮷田恵輔による。

見終わったあとのココロの「空白」をどう説明すればいいのだろう。

主演の古田新太の暴走にも見える演技も凄いが、この作品で最も気になった、というか感心したところは、無駄な配役が一人もいないこと。

邦画にかぎらず、友情出演とか原作者の顔出しとか、無理な設定が多いとゲンナリさせられることの多い近年の映画だが、本作品に無駄な配役はいない。100分強の作品だし、漁港や学校など生活シーンを切り取った映像のなかでチョイ役もあるのだが、どの配役もその役者にピッタリ。女子中学生を演じた伊東蒼(あおい)当時14-5歳も、古田新太、松坂桃李、田畑智子、寺島しのぶら錚々たる役者たちに負けていない。タイトルエンドで自らが主題歌を歌った世武裕子による音楽も最高。


今年のアカデミー賞で「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を獲ったと話題になっていたが、個人的にはこの「空白」のほうがずっと心に響いたし、無冠なのは残念な気がする。まあ、話題作りのためのアカデミー賞だし、この「空白」は万人受けする作品じゃないと思うが。

2022年4月10日日曜日

ロバの耳通信「CUBE 一度入ったら、最後」「博士と狂人」

 「CUBE 一度入ったら、最後」(21年 邦画)

「CUBE」(97年 カナダ)のリメイク。オリジナルの放映のあと、続編みたいな作品がいくつかでたがどれもゴミ。それだけオリジナルが画期的な作品だったのだろう。「CUBE 一度入ったら、最後」のポスターを見て、ああ、またつまらないリメイクかと馬鹿にしていたのだが、最初に柄本時生があっけなく殺されてしまうシーンが終わってからは、オリジナルのストーリーを知っていても目を離せない面白さ。

”最初に柄本時生が”と注記したのは、この部分が最も陳腐で面白くなかったと感じたから。柄本時生はワタシの好き嫌いを別にしても、多分、才能ある俳優なのだと思うが、こういうホラー映画には似合わない。菅田将暉や無名の子役もなかなかいい演技で、特に岡田将生の表情の七変化は見逃せない。繰り返すが、役に合っていない柄本時生や存在感・表情なしの杏は完全にミスキャスト。友情出演とも違うのだろうが、有名俳優を並べて全体をつまらなくしていることの多い近年の邦画の流行(ハヤリ)からそろそろ抜けだそうよ。

「博士と狂人」(19年 米・英・アイルランド)原題:The Professor and the Madman

オックスフォード英語辞典の編集に携わった孤高の言語学者ジェームズ・マレー(メル・ギブソン)とこれに協力した精神科施設にいる殺人犯( ショーン・ペン)の2人の男のノンフィクション物語。

ふたりの主役のアクの強さを思いっきり楽しんだが、ワキにナタリー・ドーマー、エディ・マーサン、大ファンのジェニファー・イーリー「ゼロ・ダーク・サーティ」(12年 米)ほか)など、芸達者を揃えたのにあまりヒットしなかったのは、辞書編集ノンフィクションという題材の地味さのせいか。

原作も脚本も監督も配役もいいのだろうが。どのシーンも近くで舞台劇を見ているような感動。ことに、セリフの洗練された美しさや、染み入るような一語一語の言葉に感動。文語調の落ち着いた英語も聞きやすかったし、字幕の日本語の素晴らしさにも。<Amazon Prime の字幕は最高の質だと思う> なかなか、こういう格の高さに出会えていなかった。この感動は、カミさんと大晦日の映画館で見たミュージカル映画「レ・ミゼラブル」原題: Les Misérables 12年 英・米)以来ではないか。とにかく最高に楽しめた。



2022年4月3日日曜日

ロバの耳通信「シンドラーのリスト」「ボーン・コレクター」

 4月に入ったというのに、朝から雨。寒の戻りというらしい。エアコンからの温かい風が嬉しい。

コロナは第七波に入ったといい、感染者数は高止まり。ウクライナとロシアの戦争はさぼど気にしないが、物価高は困る。健康不安とどこにも出かけられない閉塞感に参っている。ほんの先にさえ希望が見えないのだ。若い人たちがかわいそうな気がする。


「シンドラーのリスト」(99年 米)原題: Schindler's List

Davida Scheffers(イングリッシュ・ホルン)の引退公演をYoutubeで見ていて「シンドラーのリスト」主題曲(作曲ジョン・ウィリアムズ)の演奏中にDavida Scheffersオバサンが演奏中に泣き出し、おもわずもらい泣きしてしまった。主旋律のSimone Lamsma(バイオリン)も良かったのだが、Davida Scheffersが良かった。

https://www.youtube.com/watch?v=YqVRcFQagtI

で、「シンドラーのリスト」を再見。前に見て20年以上経っていたせいか、初めて見るような感覚。第二次世界大戦時のドイツによるホロコーストからユダヤ人を助けるというのが主題の暗~い作品だったから、ワタシの記憶脳が勝手に隠蔽していたのかも。

寒い雨の日、繰り返されるバイオリンソロの旋律を聞きながらほぼモノクロのこの作品を見た。灰色の人々の中、女の子の赤い服だけが記憶に残る。名作は色あせないことをシミジミ実感。




「ボーン・コレクター」(99年 米)原題:The Bone Collector

この作品もほぼ20年越しに見た。半身不随となった元刑事(デンゼル・ワシントン)が不遇の女性巡査(アンジェリーナ・ジョリー)と連続殺人を解決。同名の原作(ジェフリー・ディーヴァー)を何度も読んでいてスジも結末もわかっていたのだが、やっぱり面白かった。

当時20代のアンジェリーナ・ジョリーのナマイキさと美しさに隔世の感。