第11回このミス大賞を獲ったと。文句なしに面白い。まだ5月だから、今年いちばんというのもおかしいが、まあこの1年で最も面白かった小説。読み始めたら、止まらないーエンタメはこうでなくっちゃ。いわゆるパンデミックものなのだが、ワタシ的には「アンドロメダ病原体」(76年 マイクル・クライントン ハヤカワ文庫)以来の衝撃。ジワジワとエボラが広がってくるダスティン・ホフマンの映画「アウトブレイク」(95年 米)も怖かったが、一気にヒトが血まみれになるスプラッタ病原体を描いた「生存者ゼロ」の怖さはハンパなかった。
「クーデター」(98年 楡周平 宝島文庫)
文庫版、550ページの長編を読者を引っ張り続けるのはとても大変なことなのだろうと思う。しかし、だ。前半の退屈さに途中で放り出したくなった。カルト集団とヒーローの戦いが佳境となる後半が面白いだけに、惜しい。前半と後半のストーリー展開に必然性を見いだせないのも辛い。
同じ作家のデビュー作「Cの福音」(08年 角川文庫)はスーパーヒーローの活躍が面白かったし、ベストセラーとなり超弩級の新人と騒がれた。続編の「猛禽の宴」(08年 角川文庫)も楽しめた。面白い本を書き続けるのは難しいのだろうが、この「クーデター」は失敗作だ。自衛隊組織の深掘りをしていたら、こうリアリズムから遠ざかることはなかったろうに。銃器や爆発物のディテールは文献で得られるから、いくらでも詳しく書けるだろうが、自衛隊員の気持ちまでは届かなかったらしい。
生存者ゼロ、北海道の、3回目のパンデミックまで進みました。手洗いうがいを励行したくなりました。
返信削除