2018年9月26日水曜日

ロバの耳通信「神様のカルテ」「舟を編む」

「神様のカルテ」(夏川草介 11年 小学館文庫)

軽い読み出しで始まる。最後まで、「草枕」の漱石風の語りは変わらない。平坦な語りの中で展開する物語の、患者、看護婦、同僚の医者、下宿先の住人、飲み屋の主人、カメラマンの妻・・登場人物すべてへの、また彼らすべてからの優しさが快い。

24時間365日を標榜しているために慢性人手不足になっている地方病院の若い医者が日々の医療に追いまくられ、大学病院からの招へいに気持ちが動く、という「よくありそう」な物語なのだが、後半の高齢のガン患者の看取りのところでは涙が出た。主人公と周りの人たち、特に妻ハルとの会話がとても軽妙で、優しい。こういう医者でありたい。こういう患者でありたい、こういう夫でありたい。

たくさんは語らない夫婦の日々の会話がなんともよかった「舟を編む」(三浦しをん 11年 光文社文庫)を思い出した。

両作共、本屋大賞を獲っていて、映画化もされている(「舟を編む」(13年)のほうだけしか見ていない)が、両作とも妻役が宮崎あおい。うーん、世間的には理想の妻の姿が宮崎なのか。うーん、嫌いだとは言わないが・・。

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