「ほかならぬ人へ」(13年 祥伝社文庫)
カミさんに白石は暗いからやめたほうがいいよと言われたにもかかわらず、「草にすわる」「心に龍をちりばめて」に味をしめ、またいつか読もうと思っていた白石一文の「ほかならぬ人へ」(13年 祥伝社文庫)を。表紙のイラストが印象的で、多分、別の誰かの本に似た表紙があったせいか、既読かと勘違い。カミさんからは、また同じ本を借りたねとか言われたが、初見だった。中編2作とも浮気とか不倫とかそういう物語が繰り返されるが、一貫しているのがどういう相手かわかっても「好きでいること」をやめることができない人たちのいわば、悲しい恋愛物語。世間にはよくある話なのかもしれないが、自分がいつの間にか登場人物たちと同化していることに気づく。まあ、ハラハラドキドキはないにしてもオトナの疑似恋愛を楽しめるのだよ。
気に入った本には、残しておきたい文章が多くて、手帳とかに書き込んでいたりものだが、キリがなくなってやめてしまった。「ほかならぬ人へ」では、癌で入院している先輩を見舞う。”どんなことだって、病気になった人のことを思えば耐えられる。”とあった。健康不安のない人にはわからないだろうか。
好きな本は、気に入ったところにポストイットの付箋を付け、ときどき読み返しながら楽しむことができる。白石の本はそんな本が多い、と思う。
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