2019年3月3日日曜日

ロバの耳通信「最低。」「火の魚」

雨の日は邦画が合う。できれば、少し寒いくらいで、出かけるのが億劫になるくらいの雨の午後がいい。今日は「少し」どころか、すごく寒かった。

「最低。」(17年 邦画)
原作は現役のAV女優が書いた同名の小説(17年 紗倉まな 角川文庫)。3人の女性ー売れっ子AV女優(佐々木心音)、平凡な暮らしに耐えきれずAV出演に自分の出口を見出す主婦(森口彩乃)、母親が元AV女優だと知って揺れる女子高生(山田愛奈)の物語が淡々と進む。女優(森口)、グラビア女優(佐々木)、モデル(山田)それぞれにキレイな女性たち。原作がこういうものなのか、脚本が甘いのか、何も伝わってこない。ちょっと悪ぶってもキレイゴトなのだ。オムニバスのアイドルものに気の利いたセリフをつけたり、難しい顔をしてジンセイを語られてもねー、なんだか。やたらと多いAVシーンをナシにしたら、いい映画にできたかも。最低。
AVがエロ映画と言われていた時代。暗くて、淫靡で、悲しくて、隠された世界。だから隙間から覗くだけでもドキドキしていたワタシの時代と違い、彼らが生きているのは明るい世界なのだろう。暗いところから明るいところを見るか、その逆か、せめてどちらかにしてほしい(八つ当たり)。


「火の魚」(09年 邦画)

原田芳雄の作家と尾野真千子の編集者の、まあ恋物語といえるのかな、これも。地方の島に住む偏屈な老作家と彼のもとに原稿をもらいに行く若い編集者が出会うという、なんだかありそうなハナシだから舐めてかかっていたのは、原田芳雄も尾野真千子もあんまり好みじゃないから。もともとはNHKの地方局制作のテレビドラマだというし、舞台が瀬戸内海の小さな島ということで島の風景や素朴な島の暮らしをウリにした映画だと思っていたら、これがとんでもない期待外れ。良いほうに期待外れをなんといえばいいのかわからないが、生と死をシミジミ考えさせられた忘れられない作品となった。原田芳雄も尾野真千子も、自分の気持ちを素直に打ち明けられない不器用なふたり。見直したのは尾野真千子、女優だったのだね、キミは。ただのナマイキ女だと思っていたのに、メッチャいい演技するじゃないか。ガン治療中の毛糸の帽子をかぶって、あの可哀そうな白い顔して上目使いされたら、そりゃ極道原田じゃなくてもまいっちまうわいな。
同名の原作は室生犀星の作家と挿絵画家を題材にした小説。映画は奇を衒うことなく書かれた脚本(渡辺あや)で丁寧に作られていて安心してみていられる。ラストシーンは原田が入院した尾野を見舞った帰りの連絡船の上で、自らと尾野の死を感じながらも”タバコ吸いてえ!”と生への意欲を叫ぶ。まいった。
またいつか、雨の日に、もう一度じっくり見ることにしよう。つまらない映画で時間をムダにすることを思えば、いい映画を何度も見て、何度も感動したいと、思う。

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