24歳の志穂子に18年間の結核病院での療養生活を終わりにできたきっかけとなった見知らぬ人からの絵葉書。ポルトガルのリスボンにあるロカ岬の”ここに地終わり海始まる”という碑文を書き写した葉書のせいで病が劇的に良くなったと感じた志穂子は退院後すぐに差出人を探し始める・・という出だしは、これからの上下巻600ページ弱のミステリーの始まりにワクワク。昨日図書館から借りてきたばかり。寝る前に少し読もうとフトンに入って40ページくらい進めて、これはいけないと。なんだこのワクワク感は。このままだと夜更かししてしまう。
ワタシには持病があって、冬に弱い。ここは我慢のしどころと読書を翌日に持ち越すことにしたが、自らも結核のため長い入院生活を送ったという宮本の文章は病の辛さを書けば半端なく、深い。薄明りの天井を見ながら、文中の志穂子の主治医が退院する志穂子を思いやる言葉を思い出し、ワタシに告げられた言葉のようにそれを反芻しながら寝入った。
上巻は志穂子の感情の移ろいを中心に、下巻は志穂子の周りで輻輳する男女の恋物語が語られ、いつもの宮本らしくなく気ぜわしいストーリー展開になってしまったのは残念。
何度も出てくる”ここに地終わり海始まる”ように、そこから新しい暮らしを始めようとする志穂子への共感あるいは反感ばかりでなく、ワタシもこのウジウジした気持ちから早く脱して、どこからかどこかへ踏み出さねばと。
「天使のナイフ」(08年 薬丸岳 講談社文庫)
裏表紙の解説には、著者のデビュー作で第51回江戸川乱歩賞ぶっちぎりの受賞作とあった。著者の感じていた少年法の”何をしても罰せられない”無念さを繰り返し強調されて、共感は覚えるものの、後半の謎解きまでが長い。途中で投げ出そうとしたのだが、”ぶっちぎりの乱歩賞”のツリに惹かれ、輻輳したストーリー展開を読み解きながらなんとか最後まで読み切ったが、イマイチ乗れなかった。
殺された妻は誰々の元友人でとか、その娘が主人公の経営するカフェの店員でとか、凝った人間関係を相関図で名前を確認しながら読み進めるなんてのは、人の名前をなかなか覚えられないワタシには苦行に近く、すっかり疲れてしまった。
いちどひどい目にあうと、ソノ作家はしばらく遠ざけたくなる。薬丸岳、当分、パス!
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