2020年12月8日火曜日

ロバの耳通信「百瀬、こっちを向いて。」「あの人に逢えるまで」

 「百瀬、こっちを向いて。」(14年 邦画)

たまたまどこかで見た早見あかりの横顔が気に入って調べたら、この映画のカット。

映画評を見たら、高校生を主人公にした恋愛映画だと。ハヤリの少女マンガの映画化かと思っていたら、ちゃんと原作(同名 08年 中田永一 祥伝社)があった。



まいったな、久しぶりに泣きそうになった。よくできた脚本、早見あかりのために作られたんじゃないかと思える映画だが、ほかの配役も最高だった。ピアノ曲も。高校生主人公の恋愛映画なんて、舐めてたけど。

こんなに可愛いいコなんていなかったけど、自分にもこういう時代があった。懐かしくて、息苦しくて、胸がいっぱいになった。



「あの人に逢えるまで」(14年 韓国)原題:민우씨 오는날/英語題:Awaiting

30分弱の短編だから詳しい説明はされない。いつものように会社に出かけた夫が帰ってこない。妻は夫の好きな料理を作って、帰りを待つ。年老いてもずっと待ち続けるーとそれだけの映画。韓国の観客は最初のバスシーンでわかるのだろうが、ワタシには夫が帰らない理由が南北問題だったことに途中で気付き、ああそういう映画だったのかと。「シュリ」「ブラザーフッド」で南北問題を題材にした名作を手がけたカン・ジェギュ監督の作品。

映画のツリでは”究極のラブストーリー”とあったが、なんだか違うだろうと。再婚もし、アメリカに住む娘もいる。出かけていって帰ってこなかった(最初の)夫のことを、ボケが始まった老女が思い出しているそんな映画なんだよね。

夫が帰らない理由はどうでもよくて。いや、この南北分断による家族の別離にどうでもよくてという言い方は拙いだろうが、拉致、カミカクシ、事故などの生き別れ、いや死別もあるだろうから、ワタシがこの映画で感じ入ったのが”ずっと待つ”という寂しさ。

いちばん記憶に残っているシーンが、家の前で待つ若い妻の姿。玄関前の石畳の線に沿って足を置く、どこかで何度も自分がしたような記憶。悲嘆にくれ泣き叫ぶのではなく、自分ではどうしようもない辛さが通り過ぎてゆくのを待つ時の仕草。思い出し、泣けるのはこの映画の妻の姿ではなく重ね合わせた自分の過去。

0 件のコメント:

コメントを投稿