「長女たち」(14年 篠田節子 新潮社)

「ミッション」(第二話)は、未開地に現代医療を持ち込む難しさに例えをとっているが、医療漬けにして生を無理強いする現代医療そのものへの問題提起。
「家守娘」(第一話)は認知症の母との葛藤。ホラー作家らしく、どの物語も読者を心底怖がらせるが、追い詰めてしまわず、逃げ道を残してくれていてホッとした。
昔見た怪談映画では、どんなにおどろおどろしいシーンの連続で怖がらせても、ラストはお墓に手を合わせて回向するシーンが多かった気がするが、そうでもなければ(書く方も、読む方も)続けられないのではないか。
「薄暮」(09年 篠田節子 日本経済新聞社)

「薄暮」という題に違和感を覚えていたのだが、調べたら文庫版になった際(12年新潮文庫)に「沈黙の画布」に改題されていた。うん、すこし良くなったか。

「ブラックボックス」(13年 篠田節子 朝日新聞出版)
野菜「工場」のパートタイマーが暴露する「工場」野菜のすべて。コンビニとかで売っているパック野菜はきっと食べられなくなる。研修生と名打った外国人労働者を酷使する社会も告発しつつ、答えを出せていない。
篠田の小説にしては珍しく出口がない、救いがない。