2016年11月12日土曜日

ロバの耳通信「シュガー&スパイス ~風味絶佳~」

「シュガー&スパイス ~風味絶佳~」(06年邦画)

原作は山田詠美の「風味絶佳」。フェンスと米軍住宅の福生の風景と、挿入されるアメリカの懐メロと米軍機の騒音がなぜかピッタリ。OASISのうたう主題歌「LYLA」もなかなかです。ガソリンスタンド(劇中ではギャスステーションと呼びます)のあんちゃん(柳楽優弥)と、そこにアルバイトとしてはいってきた大学生(沢尻エリカ)のしょっぱい恋物語です。なんといってもエリカ様が、「パッチギ」(05年邦画)のマドンナ役とちがい、ずるいというかかしこいというか、どこにでもいそうな今風の女子大生なのですが、これがはまり役、まあワタシはこういう娘があまり好きではありませんが、エリカ様はここでもとてもナマイキでとても可愛いのです。ガソリンスタンドのあんちゃんの祖母役の夏木マリもはまり役、ほかのどの女優もこの役はできないと思います。このグランマと呼ばれるモダンなおばあさんは、恋に敗れた孫に、「女の子には優しくするばかりじゃあダメ、シュガー&スパイスだよ」と説教する、ワタシにはちょっと生臭ばあさんなのです。

ワタシの「ばあちゃん」はもうずいぶん前に亡くなりましたが、死ぬまで孫のワタシを100%甘やかしてくれました。割合厳しい家(つまりは貧乏なため余裕のない家)に育ったので、ときどき息が詰まりそうなこともありましたので、よくひとりぐらしのばあちゃんの家(なぜかよく引越しをしてました)に入り浸って、我が家にはゼッタイにない、ばあちゃんの好きなプロレス記事とエロばかりの夕刊紙(九州スポーツです。ちょっと前の東京スポーツとほぼ同じ)や、なんとか実話というこれもあやしげ週刊誌をめくりながら、期限切れの甘納豆を水煮した「煮豆」を食べたり、手作りの「どろどろ」甘酒を飲んだりしたものです。

ワタシが田舎を捨ててこちらに住むようになり、自転車から落ちて怪我をしたというばあちゃんはあっという間に亡くなり、ばあちゃんを焼場で骨にしてからの帰りに、ワタシは、ワタシの一番大切なものをなくしてしまったことに気づき、悲しくて、口惜しくて、いまもそのときのどうしようもない気持ちを忘れることができません。ばあちゃんはいまでも、体の調子の悪い時に、夢のなかで歯のないニコニコ顔でワタシの前に出てきて「よかたい、なんも心配せんでよかたい」と慰めてくれます。

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